活動報告 Activities

グローバルヘルス

2017.04.01

アジアの高齢化と地域内協力

2016年に日本政府が打ち出した「アジア健康構想」に呼応し、JCIEでは2017年より、高齢化先進国としての日本の経験を活かして社会的・経済的に活力ある健康長寿社会をアジアで実現するための政策対話や調査、情報発信を行っています。

2016.09.10

G7 神戸保健大臣会合サイドイベント「グローバルヘルスへの投資」

日本国際交流センター(JCIE)は2016年9月10日、世界保健機関健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)との共催で、G7神戸保健大臣会合サイドイベント「グローバルヘルスへの投資:持続可能な開発目標(SDGs)の実現のためのビジネス・ソリューション」を開催しました。   本イベントは、経済界のアクターが保健分野を中心とするSDGsの達成に積極的に取り組んでいる具体的な事例を提供し、「保健への投資」の価値についての関心を促し、その活性化の可能性や課題を話し合うことを目的として開催したものです。民間企業、政府、国際機関、市民社会組織、学術機関より官民連携の具体的な事例が発表され、また今後の課題として以下の点が提起されました。報告は以下よりご覧いただけます。   報告書 日本語報告書[1.1MB] 英文報告書[1.5MB] 神戸サイドイベント写真(flickr)   課題提起 1. 公衆衛生危機の対応・備えと、平時における保健システムの構築は、本質的に不可分である。緊急時には復興後の保健システム構築を意識し、平時には緊急時への備えを意識した保健システム強化が必要であり、緊急時と平時のシームレスな支援をすることで、復興期での支援不足から起こり得る負のインパクトを回避することができる。そのためには、より現場の実情に見合うよう、援助機関が一方的にプロジェクト期間や期待される成果をあらかじめ決めてしまうのではなく、コミュニティやサービス提供者と援助機関が共にプロジェクトをデザインし、より長期的な視野で計画実施すべきである。   2. グローバルヘルスセキュリティの文脈が変化し、感染症の脅威が急速に国境を越えグローバルに影響する今日、もはや、政府、経済界、学術界、市民社会いずれのセクターも単独ではこれらの脅威に対応することができないことは明らかである。国際社会が掲げた続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成するためには、組織やセクターの垣根を越えたマルチセクターでの連携が必須である。   3. 企業が持つイノベーションを途上国で活用するためには一企業の力だけでは限界があり、他者とのパートナーシップが必要である。日本における官民連携の事例の多くは、パートナーシップを結ぶきっかけが「偶然」に基づいている。政府がリーダーシップをとり、企業が長期的に取り組める環境を創出するためのルール作りが必要であり、さらに、個々の企業と現場のニーズを組織的なパートナーシップとしてつなげるメカニズムを作ることが求められている。  

2016.07.03

プレスツアー エチオピアに見るアフリカの保健医療と日本の役割

日本国際交流センター(JCIE)では、グローバル・ヘルスに関するアウトリーチ活動の一環として、プレス・ツアーを実施しています。保健医療を切り口に途上国の状況を取材する機会を日本のメディア各社及びフリーランスのジャーナリストの方に提供するもので、取材を通して、保健医療分野での日本の国際展開・国際貢献についての記事の執筆に役立てていただいています。   3回目に当たる本年度は、2016年8月末の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)を見据え、6月26日から7月3日にかけて、アフリカ連合(AU)の本部があり、地方分権化が進展する中で保健システムを強化した国のモデルのひとつであるエチオピアを訪問しました。参加記者は、AUの保健分野での課題とビジョン、コミュニティを中心とする保健システム強化を進める上でのエチオピアの政策についてインタビューを重ね、さらに、保健サービスへのアクセスを改善するために活動する様々なアクターの現場を丹念に取材しました。一連の取材をもとに以下8件の記事が報道され、全国の読者に、エチオピアの保健医療の現状や日本の貢献の意義について情報が提供されました。     参加者 熊谷 豪 毎日新聞社 医療福祉部記者 笹子 美奈子 読売新聞社 国際部記者 高野 遼 朝日新聞東京本社 国際報道部記者 戸谷 真美 産経新聞東京本社 編集局文化部記者 永井 理 中日新聞社 科学部記者 仲佐 保   国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部長 [アドバイザー] 國井 修   世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)戦略・投資・効果局長 [アドバイザー] (ティグライ州訪問のみ参加) 大河原 昭夫 公益財団法人日本国際交流センター理事長 [団長] 位田 和美 同 プログラム・オフィサー 青木 幸子 同 シニア・アソシエイト[通訳]   訪問先・面談者 アディスアベバ インタビュー・懇談 アフリカ連合社会問題担当委員 ムスタファ・シディキ・カロコ氏 エチオピア外務大臣 テドロス・アダノム・ゲブレェサス氏 国家エイズ対策公社 事務局長 ベルハヌ・フェイサ・ティラ氏 ユニセフエチオピア事務所長 ジリアン・メルソップ氏他、関係者 在エチオピア日本国大使館 横田賢司公使参事官他 JETROエチオピア事務所および在エチオピア日系企業関係者 エチオピアのメディア関係者   取材 アフリカ連合本部 中央医薬品公社     ティグライ州 インタビュー・懇談 キリスト教正統派メケレ州組織事務局長 シラク・カブレ・テクレ氏 イスラム教メケレ州組織事務局長 モハメッド・カハサイ・モハメッド氏   取材 アイダー・レファラル病院 デブラ・ヒォット村、保健ポストでの保健普及員、女性グループの活動 マガブ村での保健普及員、女性グループの活動 キヘン村、保健ポストでの水利組合、保健普及員、女性グループの活動 ウクロ村での家庭用トイレ普及のための社会マーケティング活動 アグラ村でのコミュニティによる子どもや脆弱なグループの保護活動     関連記事 エチオピアの医療支援「エイズとマラリアと出産と」④  東京新聞 2016年8月22日 エチオピアの医療支援「エイズとマラリアと出産と」③  東京新聞 2016年8月15日 エチオピア、草の根医療 「保健普及員」若い女性ら3万人  朝日新聞 2016年8月11日 エチオピアの医療支援「エイズとマラリアと出産と」②  東京新聞 2016年8月8日 アフリカ支援 日本、感染症予防で実績…エチオピア 健康管理システム構築  読売新聞 2016年8月2日 エチオピアの医療支援「エイズとマラリアと出産と」①  東京新聞 2016年8月1日 「エチオピア 世界最貧国、支援で衛生急改善」  毎日新聞 2016年7月17日 テドロス元保健相に聞く  毎日新聞 2016年7月17日   JCIEの過去のグローバルヘルス・プレスツアー …

2016.05.07

国会議員ギニア視察プログラム

日本国際交流センター(JCIE)では、国会議員をはじめとするポリシーメーカーに、グローバルヘルスの諸課題についての情報提供や現地視察の機会を提供しています。本年は5月1日-7日にかけて、自民党国際保健医療戦略特命委員会最高顧問である尾辻秀久参議院議員(元厚生労働大臣)を団長とする3名の国会議員に参加いただき、西アフリカのギニア共和国を訪問する視察プログラムを実施しました。     ギニアは、2014~15年にエボラ出血熱危機が起きた西アフリカ3カ国のひとつです。本プログラムでは、コンデ大統領をはじめとするギニア政府や議会の指導者、現地に拠点を置く国際機関、現地の保健医療従事者、エボラから回復した人々などとの懇談を通じて、危機対応状況や今後の対策、平時の保健システムの現状と課題について理解を深め、日本の国際貢献のあり方を検討しました。詳細は以下の報告書をご覧ください。   ギニア視察報告 報告書全文[892KB]   ギニア視察写真アルバム(Flickr)   本視察から見えた課題と日本の役割 1.グローバルな健康危機のための備え ギニアのエボラ対策に際し、日本政府やJICA等を通した日本の協力に対して深甚なる謝意が表明された。今後は、日本の有する医薬品、医療機材の継続的供給の検討、および、感染症流行国あるいはその周辺国での業務経験が豊富で、当該国の言語にも堪能な専門家を優先的に直ちに派遣できる機動的な制度の整備、ならびに、現地保健人材の継続的育成を検討することが重要である。 また、フランス軍がギニアにおける医療従事者用エボラ治療センター設置・運営で活躍した例から、パンデミックに際する日本の自衛隊のヘルスユニットの編成、初期対応に効果的な設備・資材の常備の必要性も確認された。   2.感染症危機からの復興期における日本の支援 今回のエボラ出血熱危機は、保健システムが脆弱な国では感染症の流行を効果的に封じ込めることができず、危機的な状況になりやすいという事実を露呈した。流行が終息した後に最も必要なのは、保健システムの再構築である。ギニア保健省は、2015-2024年の今後10年間の国家保健開発計画を策定し、エボラを含むすべての感染症・疾病対策、母子保健、質の高いケアの提供、コミュニティレベルでの保健システム強化、ガバナンスの向上等をその優先順位として掲げ、保健システム強化に取り組んでいる。   日本の貢献策としては、エボラのみならず、ギニアで発生頻度の高い感染症予防のためのサーベイランス強化支援、子どもの予防接種や母子保健等、ギニアの人びとの保健医療サービスへのアクセスの向上のための施策、エボラ回復者やエボラ孤児等への経済社会支援、ならびに西アフリカ仏語圏11カ国の域内人材を活用した保健人材育成ネットワークの構築により人材育成ならびに人材活用を促進する、等の可能性が検討できよう。   参加者 尾辻 秀久 参議院議員(団長) 佐藤 正久 参議院議員 小倉 將信 衆議院議員 大河原昭夫 (公財)日本国際交流センター理事長 勝間 靖 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(国際関係学専攻)研究科長、 アジア太平洋研究センター所長 清水 利恭 (独)国際協力機構セネガル事務所・セネガル国保健社会活動省保健行政アドバイザー 位田 和美 (公財)日本国際交流センタープログラム・オフィサー 石山 紀行 同 ウェブ/出版デザイナー   訪問先/面談者 表敬・懇談 アルファ・コンデ大統領 クロード・コリー・コンディアノ国民議会議長 マカレ・カマラ外務大臣 アブデゥラマン・ディアロ保健大臣 マラド・カバ経済財政大臣 サコバ・ケイタ エボラ対策国内調整官 ユスフ・トラオレ ギニア赤十字社社長 国連カントリーチーム 在ギニア仏国大使館 在ギニア米国大使館 エボラ回復者 在ギニア邦人 視察 ドンカ病院透析センター ドンカ病院ラボ イニャス・ディーン病院 ノンゴ地区エボラ治療センター コナクリ国際空港   ギニア大統領表敬後の地元メディアへの記者会見 ノンゴ地区エボラ治療センター視察     追記(2017年2月24日) 本視察が契機となり、2017年2月14日に「日本・ギニア友好議員連盟」(会長:尾辻秀久参議院議員)が設立されました。

2016.03.30

2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループによる政策提言

JCIEは、2014年10月、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室と連携し、2016年のG7伊勢志摩サミットに向けたグローバルヘルス・ワーキンググループを発足させ、サミット開催を控えた2016年5月に伊勢志摩サミットへの政策提言をとりまとめました。

2015.12.16

国際会議 「新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ ― 強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して ―」

  日本国際交流センター(JCIE)は12月16日、外務省、財務省、厚生労働省、JICAとの共催で、国際会議「新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して」を東京で開催しました。   本会議は、国際社会の新しい開発目標「持続可能な開発アジェンダ2030」が9月に採択されて以来初めて開かれる保健分野の大規模な国際会議として世界から注目を集め、安倍晋三内閣総理大臣、マーガレット・チャン世界保健機関(WHO)事務局長、ジム・キム世界銀行総裁、ビル・ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長、武見敬三参議院議員/JCIEシニアフェローが開会セッションで講演したほか、国内外の政府関係者や国際機関の代表、研究者、民間財団、市民社会の代表など約300名が一堂に会し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という概念や政策が、新しい開発目標へ移行する過程で、また公衆衛生危機への対応と備えを強化する上でどのような役割を果たせるかを議論しました。日本は2016年にはG7議長国となり、5月にG7伊勢志摩サミット、9月にG7神戸保健大臣会合が開催され、また、初めてアフリカの地で開催されるアフリカ開発会議(TICAD)も同年に開催される予定です。本会議は、こうした重要な会合に向けて、日本がグローバルヘルス分野でリーダーシップを発揮する上で大きな布石を打つ機会となりました。 会議の報告書(英文)と議論の概要は以下のとおりです。   会議報告書 会議報告書 高解像度版(英文)[3.6MB] 会議報告書 低解像度版(英文)[1.5MB] 会議報告書 エグゼクティブ・サマリー(和文)[318KB] 会議写真アルバム(Flickr)     会議概要 日本は、外交政策の柱のひとつである人間の安全保障の概念普及への具体的手段として、国内外でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の促進を実施・支援してきており、世界各国によるUHC達成への支援、ならびに、他国によるUHC達成支援を促進するよう、常に政治的関心を高める努力を続けてきた。本会議の開会にあたり安倍総理大臣は、G7伊勢志摩サミットにおいて、保健を優先課題として取り上げ、国際的な議論に主導的な役割を果たしていく意思を表明した。また、「人間の安全保障」の考えに立ち、保健を含む世界規模の課題の解決により重要な役割を果たすことが「積極的平和主義」政策を実践することになると強調した。 安倍総理大臣スピーチ 和文・動画 | 英文   開会セッションにおけるグローバル・リーダーシップ・アドレス講演で、チャンWHO事務局長はUHCへの力強い支持を表明し、UHCは「公平な社会を実現する最も強力な政策オプションである」と述べた。ジム・ヨン・キム世銀総裁は、マーティン・ルーサー・キングJr.の言葉「私たちは緊急性に直面している。もはや無関心や自己満足に浸っている時間などない」を引用し、「すべての人に健康を」というイニシアティブが謳われたアルマアタ宣言を今こそ実現しなければならない、と各国の行動を促した。   基調講演にたったビル・ゲイツ・ゲイツ財団共同議長は、多くの命を救い生活を向上させる歴史的瞬間が今訪れているとし、MDGsからSDGsへの移行期にG7議長国になる日本には、引き続きグローバルファンド, GHIT, GAVI, ポリオ、マラリア根絶など、終わっていない課題への支援を期待したい、そこには何百万人もの命がかかっている、と述べた。   武見参議院議員 → 動画(YouTube) チャンWHO事務局長 → スピーチ全文 | 動画(YouTube) キム世界銀行総裁 → スピーチ全文 | 動画(YouTube) ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長 → 動画(YouTube)   セッション1と2では、特定の疾病に特化していたミレニアム開発目標の時代から、より広範で互いに関連する開発目標を掲げるSDGs (持続可能な開発目標)へシフトしていく中、また、昨今のエボラ出血熱の流行で露呈された脆弱な保健システムの影響が残る中で、実際にUHCを実施していく際に直面する課題は何か、各国がUHCをどのように推進し課題を克服しつつあるかという経験が議論された。 テドロス・エチオピア外相(左)、ワシントン大学マレー教授(右) ディティウ・ストップ結核パートナーシップ事務局長(左)チョウドリーBRAC会長(右)   ランチセッションでは、塩崎恭久厚生労働大臣、ピヤサコン・タイ保健大臣が基調講演を行った。塩崎大臣からは、公衆衛生危機に対応するWHOの基金への拠出を行う考えが示された。後半のGHITによるセッションでは、保健アクセス改善の触媒としてイノベーションが果たす重要な役割について議論された。   午後のセッション3では、国境なき医師団やWHO、世界銀行等のさまざまな機関の立場から、また、来年1月に米国医学アカデミーにより報告書が発表されるグローバルヘルスのリスク・アセスメント等の観点から、将来の公衆衛生危機の負の影響を最小限に食い止めるためのグローバル・ヘルス・ガバナンスの改革についての議論を掘り下げた。 セッション4では、来るべきG7伊勢志摩サミットにおける日本の果たすべき役割に焦点を当て、武見敬三委員長の下、分野横断的に自由闊達な官民学連携の研究協力を行っている「2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ」による政策提言案が発表された。   最終セッションでは、ランセット誌のリチャード・ホートン編集長が議論の総括を行い、G7の主導により各国がUHCの評価やモニタリングを通じて説明責任を確保することの重要性を指摘した。閉会挨拶で、長嶺外務審議官は、会議参加者への感謝とともに、本会議の議論を今後のG7保健分野の議論に活かしていきたいと述べ会議を締めくくった。   インタビュー(YouTube) 塩崎 恭久 厚生労働大臣 テドロス・アダノム・ゲブレェサス エチオピア連邦民主共和国外務大臣 アリエル・パブロ・メンデス グローバルヘルスと母子保健次局長、米国開発庁 セス・バークレー GAVIワクチン・アライアンスCEO マーク・ダイブル 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長   プログラム ■ 開会セッション 開会挨拶:  安倍 晋三 内閣総理大臣 会議主旨:  武見 敬三   参議院議員、2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ委員長、(公財)日本国際交流センターシニアフェロー グローバル・リーダーシップ・アドレス:  マーガレット・チャン 世界保健機関(WHO)事務局長  ジム・ヨン・キム 世界銀行総裁 基調講演:  ビル・ゲイツ ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長 モデレーター:  北岡 伸一 (独法)国際協力機構理事長  大河原 昭夫 (公財)日本国際交流センター理事長   ■ セッション1:開発をめぐる国際環境の変化における健康 …

2015.06.14

プレス・ツアー「ケニアの今:保健アクセス格差解消への道のりと日本の役割」(2015年6月6-14日)

グローバル・ヘルスと人間の安全保障プログラムでは、グローバル・ヘルスに関するアウトリーチ活動の一環として、プレス・ツアーを実施している。本事業では、保健医療を切り口に途上国の状況を取材する機会を日本のメディア各社及びフリーランスのジャーナリストの方に提供し、保健医療分野への投資が国の発展に与える影響を取材していただき、同分野での日本の国際展開・国際貢献についての記事の執筆に役立てていただいている。 2回目に当たる本年度は、東アフリカの経済ハブを目指し海外からの投資を積極的に呼び込み、また日本政府がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)*達成に向けた取り組みを優先的に支援しているケニアを訪問し、分権化が急速に進む同国の中央、地方、コミュニティという各行政レベルにおいて、保健サービスへのアクセスを改善するために、どのようなアクターがどのような活動を行っているのか視察した。   *UHCとは、すべての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態(WHOの定義による)   保健長官との面談 ケリチョ郡病院 ケニア医薬品供給公社(KEMSA)   参加者 上杉 洋司 読売新聞ヨハネスブルク支局長 治部 れんげ    経済ジャーナリスト 浜田 陽太郎 朝日新聞グローブ編集部記者 三木 幸治 毎日新聞外信部記者 道丸 摩耶 産経新聞編集局社会部記者 渡邉 学 ケニア保健省上級政策技術顧問 [アドバイザー] 大河原 昭夫 (公財)日本国際交流センター理事長 [団長] 青木 幸子 (公財)日本国際交流センターシニア・アソシエイト [コーディネーター・通訳]   訪問先(訪問・面談順) 主な視察先(画像クリックで拡大) [ナイロビ]  インタビュー・懇談 Dennis Awori元駐日大使 森美樹夫公使他、日本大使館ご関係者 James Wainaina Macharia保健省長官他、保健省関係者 一瀬休生 長崎大学教授・熱帯医学研究所ケニア拠点長、戸田みつる同研究員 保健セクター援助機関代表者 JETROナイロビ事務所及び日系企業関係者 國井修 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)戦略・投資・効果局長 現地メディア関係者 Amit Thakkerケニアヘルスケア連合会CEOとの会合 Miriam Were野口英世賞受賞者  視察 アガカーン病院 LIXILが寄贈したムクルスラム内小学校のトイレ改善事業(循環型無水トイレシステム) ムクルスラム内クリニック グローバルファンドが支援するリルータ保健センター及びケニア医薬品供給公社(KEMSA) [キスム] 青年海外協力隊員 Jack Ranguma全国知事会保健委員会委員長・キスム知事、Elizabeth Ogajaキスム保健大臣 [ケリチョ]  インタビュー・懇談 Paul Chepkwonyケリチョ知事、Helen Ngenoケリチョ保健大臣 Betty Langatケリチョ保健局長  視察 JICAが支援するケリチョカウンティー病院 コミュニティの保健施設 HANDSが支援する住民ボランティアの能力強化事業 [ナイバシャ] アフリカスキャンが経営しているキオスクBlue Spoon   本プレス・ツアー実施にあたっては、(独)国際協力機構(JICA)、(特活)HANDS、外務省、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)、長崎大学、(公財)ジョイセフよりご協力いただいた。   関連記事 「[ケニア]子どもの命、救うため」(GLOBE「トイレから愛をこめて」) 朝日新聞 2015年9月5日 「記者有論:社会保障 ケニアに学ぶ地域ケア」 朝日新聞 2015年9月5日朝刊 「ケニアの母子の命を守る、日本生まれの母子手帳」 日経DUAL 2015年9月1日 世界深層「ケニアの村:命救うトイレ」 …

2015.03.31

健康と人間の安全保障プロジェクト(2011~15年)

2005年9月の国連首脳会合で合意された成果文書にて「人間の安全保障」の概念をさらに議論することがコミットされた。これを受けて、2010年4月6日に人間の安全保障に関する国連事務総長報告が発表され、国連総会における同報告書をめぐる公式討論(2010年5月20日)を経て、7月16日には人間の安全保障に関する国連総会決議(A/RES/64/291)が初めて採択された。この決議では、国連事務総長に対し、加盟国の人間の安全保障についての考え方を踏まえた報告書をとりまとめ、第66回国連総会(2012年)に提出するよう求めている。   本プロジェクトは、こうした流れ、さらにはセミナー「人間の安全保障と健康」(2010年5月14日、ニューヨーク)での議論を受けて、「健康」を切り口に改めて「人間の安全保障アプローチ」の付加価値を明らかにし、概念と実践を繋ぐガイドラインの策定を目指したものである。具体的には、健康に対する人間の安全保障アプローチと類似の政策概念との関連性を整理しつつ、アフリカ、アジア、中南米において事例研究を実施し、人間の安全保障アプローチの政策概念及び実践的アプローチとしての付加価値を明らかにし、実践に求められる要素の抽出を試みた。   初年度(2011年)はアフリカの事例を取り上げ、2011年4月末から5月頭にかけて現地視察を行ない、第3回TICAD閣僚級フォローアップ会合(2011年5月1-2日、セネガル)に合わせてサテライト・セミナー(5月2-3日)を開催した。2年目(2012年)は、ペルー・リマにて「米州における健康と人間の安全保障」に関する公開セミナー及びワークショップ(2012年9月6-7日)を開催した。そして、3年目(2013年)は、アジアの事例研究を進め、TICAD V開催に合わせて、全地域の事例研究の成果を持ち寄り、2013年6月3日に東京でワークショップを開催し、ガイドライン案及び汎米保健機構(PAHO)の米州ガイド案について議論した。   また、TICAD Vのサイド・イベントとして実施された 人間の安全保障シンポジウム「人間の安全保障:力強い個人と明るい未来を築く」に協力し、アフリカの事例研究を実施しているナイジェリアのNGO保健科学・研修・調査・開発センター(CHESTRAD)のローラ・ダレCEOがパネルに参加し、事例研究の成果としてまとめた政策提言書 “A Human Security Approach for Achieving Universal Health Access in Africa: Promoting Resilience and Securing Human Dignity”を会場で配布した。   2016年4月には、それまでの議論及び事例研究を踏まえ、報告書“Health, Resilience, and Human Security: Moving Toward Health for All”を刊行した。     メンバー シニアアドバイザー   高須 幸雄     人間の安全保障担当大使、人間の安全保障担当国連事務総長特別顧問 武見 敬三 (財)日本国際交流センターシニア・フェロー   実行委員   神馬 征峰     東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教授 [委員長] 石井 澄江 (財)ジョイセフ常任理事・事務局長 稲場 雅紀 「動く→動かす」(GCAP Japan)事務局長 勝間  靖 早稲田大学国際学術院教授、グローバル・ヘルス研究所 所長 木村 秀雄 東京大学大学院総合文化研究科教授(人間の安全保障プログラム兼任) 小沼 士郎 外務省国際協力局国際保健政策室長 山本 太郎 長崎大学熱帯医学研究所教授 湯浅 資之 順天堂大学准教授 渡邉  学 JICA人間開発部次長兼保健第一グループ長   協力機関   保健科学・研修・調査・開発センター(CHESTRAD)(ナイジェリア) 汎米保健機構(PAHO) 環境財団(メキシコ)   ワーキング・グループ   北村 尭子 東京大学医学系研究科国際地域保健学教室   清水 真由美 東京大学医学系研究科国際地域保健学教室   スーザン・ハバード …

2014.09.30

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する 日本・世界銀行共同研究プログラム

本プログラムは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注)を実現し、維持していくためのあらゆるアプローチについて、保健財政と保健人材(サービス提供)の両面から包括的に検討することを目的に、2012年1月に開始した事業。 日本を中心に中・低所得国(低中所得国9カ国(バングラデシュ、ブラジル、エチオピア、ガーナ、インドネシア、ペルー、タイ、トルコ、ベトナム)及び フランスにおいて事例研究が進められ、日本国際交流センター(JCIE)は日本事例研究(以下、メンバー参照)と日本で実施される諸会合の事務局を担いました。なお、本プログラムは、武見敬三JCIEシニア・フェロー、世界銀行グループ人間開発局局長を共同議長とするプログラム調整委員会によって決定された方針に沿って運営されました。   (注)UHCとは「すべての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態」(WHOによる定義)   成果 包括的で持続的な発展のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―日本からの教訓 包括的で持続的な発展のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:11カ国研究の総括                   日本事例研究メンバー (2014年9月時点) 研究チーム:   池上 直己 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授【主査】 小塩 隆士 一橋大学経済研究所教授 ジョン・キャンベル 東京大学高齢社会総合研究機構訪問教授、ミシガン大学政治学部名誉教授 高木 安雄 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授 高久 玲音 一般財団法人 医療経済研究機構主任研究員 田川 洋平 (株)川原経営総合センター・税理士法人 川原経営事業推進企画室コンサルタント 角田 由佳 山口大学大学院東アジア研究科准教授 西村 周三 一般財団法人 医療経済研究機構所長 別所 俊一郎 慶應義塾大学経済学部・大学院経済学研究科准教授   国際アドバイザー:   ジョン・キャンベル 東京大学高齢社会総合研究機構訪問教授、ミシガン大学政治学部名誉教授 マイケル・ライシュ ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健政策武見太郎教授   中・低所得国保健人材研究アドバイザー: 神馬 征峰 東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教授    活動概要 2012年1月24日 マヒドン皇太子賞会議(PMAC)サイド・イベント「UHC実現に向けた課題と機会」(共催:世界銀行、国際協力機構(JICA)、JCIE) 2012年10月10日 IMF・世界銀行年次総会サイド・イベント(共催:日本政府、世界銀行、JCIE) 2012年12月9-17日 UHCをテーマとする研修「WBIフラッグシップ・コース」(共催:日本政府(外務省、財務省、厚生労働省)、(独)国際協力機構) 2013年12月5-6日 成果発表国際会議(共催:日本政府、世界銀行、協力:JCIE) 2014年10月9日 出版記念イベント(世界銀行本部:ワシントンDC) 2014年11月10日 出版記念シンポジウム(東京、共催:日本政府、世界銀行、協力:JCIE)  

2014.04.01

「UHCに関する日本・世界銀行共同研究プログラム」報告書出版記念シンポジウム 

2014年11月10日、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する日本・世界銀行共同研究プログラム最終報告書の出版を記念するシンポジウム(日本政府、世界銀行共催、日本国際交流センター協力)が国連大学本部(東京)で開催され、約160名が参加した。             シンポジウムの動画(YouTube) 日本語版(再生リスト) 英語版(再生リスト) 刊行情報 (書籍の郵送をご希望の方はこちらよりお申込み下さい) 包括的で持続的な発展のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―日本からの教訓 包括的で持続的な発展のためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:11カ国研究の総括   シンポジウムでは、日本政府を代表して、塩崎恭久厚生労働大臣、御法川信英財務副大臣、中根一幸外務大臣政務官、本プログラムの共同議長を務める武見敬三参議院議員(日本国際交流センターシニア・フェロー)からご挨拶いただき、日本が自国の経験を踏まえながらUHCを国際的に推進することの重要性について改めて確認された。また世界銀行グループを代表して、塚越保祐駐日代表からは、2030年までに極度の貧困を撲滅するという同グループの目標を成し遂げる上でUHC達成が最重要課題であり、今後も日本政府と協力して途上国の保健システム強化とUHC達成に向けた支援を行うと述べられた。   ■ UHCを達成する道筋:11カ国事例研究の成果 本共同研究では、保健医療サービスの提供に必要となる費用を、いかに確保し抑制・管理するかという保健財政の問題、質の保証された医療を提供するのに要となる保健人材をどのように養成・規制・配置するかという保健人材の問題に焦点を当て、11カ国(バングラデシュ、ブラジル、エチオピア、フランス、ガーナ、インドネシア、日本、ペルー、タイ、トルコ、ベトナム)を事例対象に、いかにUHCを政策目標として導入し、それを達成・維持しようとしているか分析した。また、政策の実施を左右する各国の政治経済状況についても分析している。      前田明子氏                              マイケル・ライシュ氏   本セッションでは、総括報告書の主要著者である前田明子 世界銀行リード・ヘルス・スペシャリストとマイケル・ライシュ ハーバード大学教授からは、①UHC目標を導入したばかりの財源が限られた国、②カバー範囲の無保険者や貧困層への拡大を試みている国、③UHCを達成するもその公平性とサービスの質の問題に直面している国、④経済・労働環境の変化の中でUHCの持続可能性の問題に直面している国、という4つに類型化された11カ国の傾向について発表された。   発表スライド 前田明子 世界銀行リード・ヘルス・スペシャリスト 日本語|英語 マイケル・ライシュ ハーバード大学教授 日本語|英語   小寺清JICA理事からは、4つの類型化が支援対象国においてUHCに向けた包括的な戦略を策定する上で有用であることが強調され、JICAのUHCへの取り組み状況と今後の方向性が報告された。 渋谷健司東京大学教授からは、UHCをグローバルに推進するための諸機関の役割・連携のあり方を検討すること、そして高齢化の下で日本が直面している問題を他国と共有し、2016年のG8等の機会に新しいモデルを示すことが提案された。 石井澄江ジョイセフ理事長からは、本研究に欠けていた視点として、サービスの受け手の立場からUHCのあり方を研究すること、そして12月12日のUHCデーを一般の理解を得るために活用すべきことが提案された。 質疑応答では、UHCの対象に介護を含める必要性、最も貧しい人々を制度の中心に置くための方法、援助機関の政治経済分野への関与、米国の医療制度の行方について議論が行われた。 小寺 清氏 渋谷健司氏 石井澄江氏     ■ 世界に活かしうる日本の経験 池上直己氏 最初に日本研究報告書を監修した池上直己慶應義塾大学教授が、日本から世界に共有しうる教訓として、UHC達成までの道のり、診療報酬制度の仕組みと役割、医師配置を決定する金銭的・非金銭的要因、医療従事者養成の歴史的重要決定、そして今日的課題を中心に発表した。ジョン・キャンベル東京大学特別研究員からは診療報酬改定がどのような政治プロセスで決定されてきたかについて、また西村周三医療経済研究機構所長からは医療財政の状況と医療保険に見られる格差について発表された。   発表スライド 池上直己慶應義塾大学教授 日本語|英語 ジョン・キャンベル東京大学特別研究員 日本語|英語 西村周三医療経済研究機構所長 日本語|英語 ジョン・キャンベル氏 西村周三氏     スウィット・ウィブルポルプラサート タイ保健大臣顧問からは、タイが日本から学んだ教訓として、複数の保険プログラムを持つ意義、民間セクターのあり方、出来高払いの利点、レベルの異なる医療専門家の必要性、施設でのケアを中心とする介護の問題点という5点が共有された。 島崎謙治 政策研究大学院大学教授は、日本の経験の応用可能性について、被保険者の管理や所得の捕捉、医療提供体制、経済成長、そして実務処理の実効性確保を含む諸条件が必要であることを指摘した。 藤本康二 内閣官房参事官は、低中所得国で台頭する中高所得層のニーズを満たす医療サービス提供体制を構築しつつ、それが貧困層に対する医療提供体制強化に寄与する循環を作ることの重要性、ICT(情報通信技術)といった技術革新の可能性を指摘した。 宇都宮啓 国立国際医療研究センター局長は、厚労省保険局医療課長としての経験も踏まえ、公平性を重視し、段階的に構築されてきた日本の制度を低中所得国が導入する際、公平性を追求する意思を持って、段階的に導入を進める必要があると指摘した。また、国立国際医療研究センターに期待される役割が、医療から公衆衛生分野の協力へと広がっていることも紹介した。 熊川寿郎 国立保健医療科学院部長は、昨今、低中所得国のニーズが技術的な研修から、保健医療制度の包括的マネージメントへ移行していることを紹介した。また、感染症、非感染症、高齢化という3つの山を乗り越えてきた日本の経験に基づいて、保健、医療、介護をパッケージとした新しいUHCのコンセプトを国際的に打ち出し、さらにリバースイノベーションを活かせば、日本にもメリットが生まれるだろうと指摘した。 質疑応答では、複数の保険プログラムの計画的な導入の可否、データへのアクセス可能性が医療アクセスの公平性に与える影響、新しい技術を手の届く価格で提供する重要性について議論が行われた。   スウィット・ウィブルポルプラ サート氏 島崎謙治氏   藤本康二氏   宇都宮 啓氏   熊川寿郎氏     関連記事 …

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