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日本国際交流センター(理事長・大河原昭夫、以下JCIE)ならびに東アジア・アセアン経済研究センター(事務総長・ 西村英俊、以下ERIA)は、アジア健康長寿イノベーション賞2022(第3回公募)の受賞団体を決定し、本日発表いたしましたのでお知らせいたします。日本を含むアジア9か国・地域から応募があり、アジアの有識者で構成される国際選考委員会による厳正なる審査の結果、第3回の受賞者は以下の8団体に決定いたしました。
「アジア健康長寿イノベーション賞」は、日本政府によるアジア健康構想の一環として、ERIAおよびJCIE が2020年に創設した表彰事業で、健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する取り組みをアジア各国から募集し表彰するものです。テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で、高齢化による様々な課題の解決となる革新的なプログラム、サービス、製品、政策を募集・表彰することにより、アジア地域内で優れた知見を共有、その実際の応用を後押し、この地域の共通課題である急速な高齢化に共に対応していくことを目的としています。
本年は、国連「健康な高齢化の10年」の一環として「エイジズムと闘うグローバルキャンペーン」が昨年開始されるなど、エイジズム(年齢に基づく偏見や固定観念)の解消に向けた気運が高まっていることから、本課題に取り組む団体を表彰するため特別賞を設置しました。
2022年11月8日に東京プリンスホテルで開催されるアジアの高齢化問題に関する「AHWINフォーラム」にて、8団体に対する授賞式を行います。どなたでもご参加いただけますのでお申し込みください。詳細はこちら。
大 賞
株式会社オレンジリンクス (日本・埼玉)
認知症の高齢者を見守る「QRコード爪シールシステム」
パーソナライズされたQRコードが印刷された爪に貼る小型の防水ステッカーを作製し、スマートフォンで読み取ると、個人情報を開示することなく、指定した連絡先(自治体や介護施設など)の連絡先が表示されるシステム。自治体や警察、地元の鉄道会社などと連携し、認知症の人が徘徊した際にこのシステムを活用した介助トレーニングも行われている。選考委員会において、このイノベーションは、高齢化社会が直面する問題に対処するために、既存の技術を創造的かつ費用対効果が高く、利用しやすい方法で使用した例として高く評価された。
龍振シニアケア(Longzhen Senior Care)(中国・北京)
ワンストップ・コミュニティ高齢者サービスプログラム
エレベーターのない集合住宅に暮らす、日用品の入手に不便を抱える高齢者向けのワンストップで利用できる無料のサービスプログラム。ソーシャルワーカーとボランティアから成るメンバーが高齢者一人ひとりのニーズを把握し、デイケア、在宅医療サービス、緊急通報対応、宅配食、法的支援、買い物支援など、あらゆるサービスを手配している。地域の高齢者と企業の双方のニーズに応えて質の高いサービスの提供に貢献している点が高く評価された。
上海尽美高齢者サービスセンター(Shanghai Jinmei Care for the Elderly)(中国・上海)
メモリーホーム
ソーシャルワーカーが認知症の人やその家族に対して、診断前から認知症に関するほぼすべての面を網羅する専門家による多様で一貫した支援プログラム。「メモリーカフェ」やボランティアネットワーク「認知症フレンズ」を通じて、認知症に対する社会の理解を深めるための活動も行っている。この事例は認知症の方とその家族が希望と尊厳を持って生活するための支援モデルとしてできるよう、望まれるサポートを提供するモデルとして評価された。
特別賞(エイジズムへの取組)
ブーンメリット・メディア (Boonmerit Media)(タイ・バンコク)
多世代オンライン・メディアキャンペーン
オンラインメディアを通じて、高齢者のアクティブなライフスタイルの実現や、若年層を対象に定年後のウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)に向けた準備の必要性を伝えるキャンペーン活動。若年層と高齢者が協力して Facebook、YouTube、TikTok用のコンテンツを制作し、ヘルスケアや金融知識など、老いに備えるためのコンテンツなども制作している。わずか 3 年で 100 万人以上のフォロワーを獲得するなど、新たなコミュニケーションツールを活用して多世代間の交流とエイジズム(年齢に基づく偏見や固定観念)の払拭に効果的に取り組んでいる点が高く評価された。
オンラインメディア「マヌッタンワイ」 ウェブサイト YouTube チャンネル ビデオサンプル
準 大 賞
株式会社シルバーウッド(日本・千葉)
VR 認知症
認知症の症状や周囲の人との関わりによって引き起こされる様々な感情を VR(仮想現実)技術を使って当事者視点で体験するプログラム。体験後の参加者同士の話し合いも組み合わせて、より深く認知症を理解し、認知症の人が安心して暮らせる環境づくりに思いを巡らすことを重視している点が評価された。
同社ウェブサイト「VR認知症」 動画「VR認知症 -認知症を体験する-」
株式会社メディヴァ(日本・東京)
認知症AR体験「Dementia Eyes」
AR(拡張現実)技術を搭載したフィルターを通して、奥行き知覚の低下など認知症による視覚的困難さを体感するプログラム。実際の環境で体感することができることから施設における介護の方法や認知症に配慮した居住環境の見直しなどに活用できる点が評価された。
同社ウェブサイト 掲載記事「認知症だとこう見える。AR体験が衝撃でした」
一般社団法人おでかけリハビリ推進協議会(日本・北海道)
高齢者の外出促進と商業活性化の両立に向けた「おでかけリハビリ」
地域内の高齢者や要介護者を対象に、「買い物・食事・レクリエーション」と「活動・運動・交流」というコンセプトを組み合わせた新しいリハビリの形を提案するものであり、地元の商店街、市場、百貨店などと連携することで地域経済の活性化にも貢献している点が評価された。
掲載記事「函館朝市がリハビリの場に!」
宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議 健康・生きがい就労部会(日本・兵庫)
健康・生きがい就労トライアル
エイジフレンドリーシティーを標榜する自治体と市民が協働して開発した事業。まだまだ働きたい元気な高齢者と人手不足に悩む介護・保育施設などの事業所をマッチングさせる高齢者向けの 3か月間の就労トライアルプログラム。就労へのハードルを低くし、高齢者の社会参加を積極的に支援している点が評価された。
受賞事例の概要は下記パンフレット(ダウンロード)2022_HAPI_brochure final web または、こちらのプレスリリースをご覧ください。
受賞事例の詳細記事(英文)はAHWIN公式ウェブサイトをご覧ください。
日本国内では、1次選考として国内選考プロセスを設けました。国内選考委員会の厳正な審査により最優秀事例・優秀事例を以下の通り決定し、このうち最優秀事例が国際選考に提出され他国の事例とともに審査されました。
一般社団法人おでかけリハビリ推進協議会(北海道)
「高齢者の外出促進と商業活性化の両立に向けた「おでかけリハビリ」」
株式会社オレンジリンクス(埼玉県)
「認知症の高齢者を見守る『QRコードネイルシールシステム』」
株式会社シルバーウッド(千葉県)
「VR認知症」
宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議 健康・生きがい就労部会(兵庫県)
「健康・生きがい就労トライアル」
『鶴見区シニアボランティア アグリ』、JA大阪市、鶴見区民生委員児童委員協議会、鶴見区地域包括支援センター連絡会、社会福祉法人大阪市鶴見区社会福祉協議会(大阪府)
「新鮮でおいしい野菜を作り、その野菜を『こども食堂』へ寄付するボランティア活動を通じて広がる、シニア世代の健康と生きがいづくり」
東京大学 未来ビジョン研究センター(東京都)
「フレイル予防を軸とした地域高齢住民主体の健康長寿まちづくりと新価値生きがい創造」
南房総市千倉町平舘区、千葉大学医学部附属病院患者支援部、松永医院、富浦エコミューゼ研究会(千葉県)
「高齢者が主役!受け継ぐ地域の活力」
株式会社メディヴァ(東京都)
「認知症AR体験『Dementia Eyes』」
メディカル・ケア・サービス株式会社(埼玉県)
「当たり前の生活を実現する科学的根拠に基づいた『MCS版自立支援ケア』の構築」
尾張旭市役所 尾張旭市健康づくり推進員会(愛知県)
「『寝たきりにさせないまちづくり』のため市民主体の筋トレ事業に取り組む」
株式会社楓の風(神奈川県)
「地域社会への参加を促進する高齢者の社会的自立支援ICTシステムの開発」
国立長寿医療研究センター、知多市、高浜市、名古屋市緑区、大府市、東浦町、刈谷市、東海市、半田市(愛知県)
「COVID-19による活動自粛下における介護予防の推進」
夢ランドひふみ(熊本県)
「ゆるっと! ひふみ亭」
本賞が創設された背景には、アジアにおける人口高齢化が非常に速いスピードで進展していることが挙げられます。現在の東アジアと東南アジアの 65 歳以上高齢者人口は約 2.7億人ですが、2050年には5.7億人と2倍以上になると推計されています*。65歳以上の高齢者の人口割合が7%を超えた社会を「高齢化社会」(aging society) 、14%を超えた社会を「高齢社会」(aged society) と呼びますが、欧米では高齢化社会から高齢社会に変わるまで何世代もかかったのに対し、日本は24年、アジアの多くの国では、日本と同程度か、より短い期間で高齢社会に移行すると予想されています。
アジアでは、かつての日本のように複数の世代が一緒に暮らし、家族が年老いた親の世話をする社会規範が色濃く残っています。しかしその一方で、多くの国で経済発展と産業構造の変化、都市部への人の移動や単身世帯の増加などにより、家族の中での高齢者ケアの担い手が減ってきているのも現状です。ケアを家族だけのものとせず、公的サービスに加え、コミュニティの仕組みの整備や民間事業の取り組みを活用することで、どのような人も予防、医療や介護のサービスにアクセスできるようにすることが求められています。健康な高齢者を増やすことで高齢者の経済的・社会的な自立を促し、経済的にも社会的にも活力ある健康長寿社会を構築することは、今後のアジアの持続可能な成長にとり重要課題となっています。
* United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division, World Population Prospects: The 2019 Revision, Key Findings and Advance Tables (2019).
詳細は以下をご覧ください。
日本国際交流センターは、民間レベルでの政策対話と国際協力を推進する公益法人。民間外交のパイオニアとして、1970年の設立以来、非政府・非営利の立場からグローバルな知的交流事業を実施している。東京とニューヨークを拠点に、外交・安全保障、グローバルヘルス(国際保健)、ダイバーシティ、グローバル化と外国人財などの多角的なテーマに取り組む。
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