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日本国際交流センター(東京:理事長・狩野功、以下JCIE)ならびに東アジア・アセアン経済研究センター(ジャカルタ:事務総長・ 渡辺哲也、以下ERIA)は、「アジア健康長寿イノベーション賞2024」の受賞団体を決定し、国際高齢者デーである10月1日に発表しました。
2020年に創設された本賞は急速に高齢化が進むアジア地域で健康長寿の達成や高齢者ケアの向上に資する取り組みを表彰する国際賞です。第4回目にあたる今回は、前回の第3回公募を上回る、日本を含むアジア12カ国・地域から応募が集まりました。この度、アジアの有識者で構成される国際選考委員会による厳正な選考の結果、高齢化に伴う課題に革新的な手法で取り組む7団体への賞の授与を決定いたしました。
テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で日本、フィリピン、タイ、シンガポールの団体が大賞および準大賞に選ばれたほか、今年は特別賞として韓国の過疎地域で高齢者ケアのシステム構築に取り組む団体が選出されました。
今般の応募事例の傾向として、タイやフィリピンからの応募が例年より多く集まり、フィリピンの団体が賞に輝いたのも今回が初となりました。また、今年は生涯学習の概念に焦点を当てた応募が増加し、高齢者が自身の健康と福祉に関して意思決定ができるよう教育および収入向上の機会を提供する事例のほか、現代のデジタル社会において、情報の格差やデジタルリテラシーに着目した事例が多く見られました。
なお、表彰式は、2025年1月にタイ・バンコクで開催する予定です。
●英文サイトはこちら
大 賞
Nurse and Craft株式会社 (日本・広島)
まちを再生する訪問看護
瀬戸内海に浮かぶ大崎下島は人口約1600人、高齢化率が約70%の過疎地で、少子高齢化や人口流出により、慢性的な医療・介護サービスの不足をはじめ、自宅にも介護者がおらず、在宅療養や看取りが非常にむずかしい環境にあった。Nurse and Craftは大崎下島を未来の日本の姿と捉え、同地域を「健康不安がないまちへと再生する」ことを目的として、訪問看護ステーションの設置や、IoTヘルスケアサービスの提供、ヘルスツーリズムの実施等を通じ、地域の課題解決に取り組んでいる。人口減少が進む過疎地における事例として、僻地での医療介護インフラを整備したことや、地域住民がより活動的で充実した生活を送れるようにするためのモデルを開発・実装したことが高く評価された。
パディアレスキュー(フィリピン・パンガシナン)
ゴー・バイク・プロジェクト
フィリピンのような災害多発地域では、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える高齢者が最も脆弱な人々に含まれ、普段から健康を管理することが合併症の早期発見と有事の時の対処に求められる。ゴー・バイク・プロジェクトは、自転車で地域社会を巡回し、高齢者の健康を定期的にモニタリングする若者たちを育成する取り組みである。彼らは自転車に救急キットや医薬品など基本的なヘルスケアを提供する物品を備え、さまざまな地形を走破し、遠隔地に暮らす高齢者の血圧や血糖値をチェックして記録する。また、プログラムでは災害への備えと減災についての知識を共有するための訓練も受けている。現在までに1,200人超のゴー・バイカーが認定され、プロジェクトは37,000人を超える人々にサービスを提供してきた。このプロジェクトは、世代間で互いへの尊敬とコミュニケーションを促進し、若者たちに健康維持・増進の重要性を意識させる役割も果たしていることが高く評価された。
チェンマイ大学・生涯教育学部(タイ・チェンマイ)
デジタル時代における高齢者の職業スキルを育成するプログラム
タイの労働力人口が減少する中で、高齢期まで働き続けることを希望する人が多いにもかかわらず、現代のデジタル社会で継続的な収入を得るためのスキルやツールをもつ人は多くない。チェンマイ大学の生涯教育学部は、地域の高齢者コミュニティと連携し、オンラインコースやウェビナーに加えて、対面でのトレーニングセッションを実施し、高齢者に技術の使い方やオンラインビジネスの立ち上げ方、収入を得るための様々な職業スキルを教え、自立を促している。本活動は、国連のSDG4「質の高い教育」に関するチェンマイ大学の戦略的取り組みの一環であり、タイ国家研究評議会の支援を受け、国内2,500の高齢者スクールと、政府、民間、地域機関との協力によって実施されている。職業スキルの育成に加えて、財務管理や心身の健康についても教え、高齢者の教育および収入向上の機会を提供する事例として高く評価された。
特別賞(ケアネットワークの開発)
中央大学校・地域ケアと健康公平性研究所、サマリーA.I.、井邑市公衆衛生センター(韓国・井邑市)
ケアネット―過疎地域の高齢者のためのスマート統合ケアアプローチ
人口減少に直面する韓国の井邑市(チョンウプ市)では、65歳以上の人口が31%を占め、農村部に限るとその割合が46%に上る。地域の課題に対応するため、中央大学校は市と連携してスマート統合ケアシステムの開発に向け、「ケアネット」というデジタルプラットフォームを構築し、医療、福祉、介護、保健サービスをつなぎ、組織間でデータ共有とコミュニケーションを実現した。これにより、専門家は迅速に個々のニーズを特定し、他の専門家と連携して課題解決に取り組める。なお、サービスの受益者は自身の健康情報を閲覧し、誰がそのデータにアクセスできるかをコントロールすることができる。また、市民の保健リーダーとして「村のケアマネージャー」制度を確立し、各村で選ばれた個人がトレーニングを受け、近隣住民がシステムを利用できるよう支援し、代理として彼らをサポートする役割を担う。「デジタル」と「人」の両側面から、過疎地における課題をデータで解決するシステムを開発したことが高く評価された。
準 大 賞
ライオン・ビフレンダース・サービス協会(シンガポール)
アイム・オーケー・プログラム
社会的孤立を防ぐ目的のもと、高齢者にとっても使いやすいタブレットデバイスを開発し、日々の健康状態を見守ることを実現した事例。ユーザーである高齢者が「I am OK(私は大丈夫)」ボタンを押すことで、自身が無事であることを知らせることができ、チェックインがない場合は、家族や開発組織内のボランティアに安全確認を促す連絡が届く仕組みとなっている。また、タブレットには、娯楽、学習、健康関連の機能も備わっており、高齢者のデジタルリテラシーを向上させる事例として評価された。
タイ・フア・クアン・モラルチャリティ、統合ケア機構(シンガポール)
高齢者のためのマイクロ・ジョブ・プログラム
元気で活動的な高齢者が、食事の配達や服薬のリマインド、病院への付き添いなどのタスクを通じて、支援を必要とする近所の高齢者をサポートするプログラム。内容は日常生活にまつわる「小さなタスク」なので、参加のハードルが低く、適切なトレーニングを受け、支援内容に対して手当が支払われる。高齢になっても地域社会とのつながりや助け合いの意識に着目し、高齢者の生きがいや収入向上の機会を提供する点が評価された。
徳島大学大学院医歯薬学研究部先端脳機能研究開発分野、ビューティーライフ株式会社(日本・徳島)
産学連携による高齢者のためのオンライン体操サロン
「腸―脳―筋相関」というコンセプトに基づき、オンラインで口腔や四肢の体操、脳トレ体操、脳トレクイズなど1万種類以上の組み合わせから自在に放送時間を決定できるシステムを産学連携で開発した事例。パーキンソン病患者を対象とした研究で、半年から一年の使用で運動能力や認知能力に改善が認められたエビデンスに基づく内容を使用している。介護領域でのマンパワー不足を補うことで現場の負担を軽減し、エビデンスに基づいた体操をICTを通じて提供し、利用者のフレイルを予防することが評価された。
佳作
また、上記7団体のほか、最終選考に進んだファイナリストとして、マレーシア・タイの3団体が佳作に選出されました。
マレーシア老年学研究所(マレーシア・クアラルンプール)
高齢者のためのデジタルリテラシーモジュール
ヤングハッピープラス(タイ・バンコク)
都市部の高齢者の生活の質を向上させるヤングハッピープラスのオンライン・コミュニティ・プラットフォーム
タイ国立タマサート大学大学院ビジネススクールABCDセンター(タイ・バンコク)
レディ・シニア・プロジェクト
日本国内では、1次選考として国内選考プロセスを設けました。国内選考委員会の厳正な審査により国内優秀事例を以下の通り決定し、国際選考に提出され他国の事例とともに審査されました。
株式会社ayumo・大阪大学大学院医学系研究科・大阪大学データビリティフロンティア機構・国立病院機構大阪南医療センター(大阪府)
ロコモティブシンドローム判定コンピュータビジョン
株式会社 伊藤園(東京都)
おいしく手軽に飲める ユニバーサルデザインのとろみ付き緑茶「伊藤園 とろり緑茶」
移動と健康・QOLコンソーシアム(ヤマハ発動機株式会社、千葉大学、日本福祉大学、河内長野市、王寺町、美しヶ丘自治会、株式会社エイチ・ツー・オー商業開発)(千葉県)
地域の高齢者の健康・QOLを向上する公道用電動カートによる移動支援
大阪河﨑リハビリテーション大学 プロジェクトチーム、貝塚市健康福祉部高齢介護課、不二製油株式会社(大阪府)
フレイル・ロコモ・認知症予防プロジェクト
大橋運輸株式会社、瀬戸市役所、瀬戸市社会福祉協議会、瀬戸警察署、瀬戸旭医師会、名古屋大学(愛知県)
0084地域健康プロジェクト~治療より予防~
株式会社カラーズ、有限会社 関鉄工所、風と地と木合同会社、株式会社善大工業、大井行政書士事務所(東京都)
外出がラクになる介助型車椅子「COLORS®」の開発・販売
慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)井庭崇研究室(神奈川県)
『ともに生きることば』プロジェクト
株式会社リハビリホーム一歩(埼玉県)
多世代交流を通した、認知症高齢者の居場所・役割作りの取り組み
アジア健康長寿イノベーション賞は、日本政府によるアジア健康構想(AHWIN)の一環として、東アジア・アセアン経済研究センター(ジャカルタ、ERIA)および(公財)日本国際交流センター(JCIE 、東京・ニューヨーク)が2020年に創設した表彰事業です。アジア地域共通の課題である急速な高齢化に対応する優れた知見を共有し、その実践と応用を支援することを目的として、アジア各国から健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する革新的な取り組みを募集し表彰するものです。以下の三部門で優秀な事例に大賞・準大賞を授与するほか、適宜、様々なテーマの特別賞を設けることもあります。
テクノロジー&イノベーション部門:革新的な技術や手法、発想等により、安全で効率的に高齢者の自立を促している事例、あるいはそれにより介護者の身体的・精神的・時間的な負担軽減につながる事例
コミュニティ部門:高齢者を地域で支える取り組みや世代間交流の機会を通して、その地域に住む高齢者の健康、活動的な社会参画、安全な暮らしの維持に貢献している事例
自立支援部門:高齢者が日常生活動作(ADL)を維持しながら、住み慣れた地域で生活し続けられるよう心身機能を維持・向上、あるいは回復させることを目的とする事例
現在、アジアはかつてないほどの人口動態の変化に直面しています。2022年の国連統計によると、2050年には、東アジアと東南アジアの65歳以上の人口は5億5700万人に達すると予想されており、これは現在の2倍以上の数字です。急激な高齢化は、アジア全体に社会的・経済的影響を及ぼし、地域の持続可能な成長にとり重要な課題となります。アジア健康長寿イノベーション賞は、地方自治体、民間企業、市民団体、教育・研究機関など幅広い組織が応募することができ、高齢化の多様な課題に対して、革新的で効果的な取り組みを発掘し、後押しすることを目的としています。
ERIAとJCIEは、アジア健康構想を支援し、アジアにおける健康長寿の実現を目指した域内連携の推進を目的として、地域の人々や政策立案者にとって有益となる研究、対話、情報共有を支援しています。アジア健康長寿イノベーション賞の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
日本国際交流センターは、民間レベルでの政策対話と国際協力を推進する公益法人。民間外交のパイオニアとして、1970年の設立以来、非政府・非営利の立場からグローバルな知的交流事業を実施している。東京とニューヨークを拠点に、外交・安全保障、グローバルヘルス(国際保健)、ダイバーシティ、グローバル化と外国人財などの多角的なテーマに取り組む。
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