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2024年2月2日~4日にかけて、日英21世紀委員会第40回合同会議が、神奈川県小田原市で開催されました。今回の合同会議では、「日英両国の国内・外交政策の現状と課題」、「グローバル・セキュリティ:ウクライナ・ロシア」、「グローバル・セキュリティ:国際安全保障への米国の対応」、「気候変動とエネルギー」、「グローバルヘルス:連携によるイノベーションの強化」、「AI」について討議が行われました。
小田原での合同会議に先立ち、東京において岸田文雄首相表敬訪問、ジュリア・ロングボトム駐日英国大使主催昼食会、上川陽子外務大臣主催レセプションが開催されました。
ステートメント(提言)、詳細プログラム及び参加者は以下のとおりです。提言は、日本側では2024年3月29日に木原誠二座長より岸田総理大臣に手交されました。
プログラム | 参加者
和文ステートメント | 英文ステートメント
岸田文雄首相への提言手交 日英21世紀委員会による表敬(首相官邸ウェブサイト)
日英21世紀委員会の英国側メンバー等による岸田総理大臣表敬 2024年2月1日(外務省ウェブサイト)
セッション1:日英両国の国内・外交政策の現状と課題
日英両国の政治・経済動向について議論が行われました。日本において現政権の支持率は低迷しているものの、野党支持率が上昇しているわけでもなく、2024年から25年にかけて行われる、総裁選、参議院および衆議院選挙で、自由民主党は多くの課題に直面することになることが予想されることが報告されました。また景気回復状況、株式市場の活性化、GDPプラス成長がみられた場合も、影響が出てくることが指摘されました。英国では、保守党が課題に直面しており、2025年1月までに総選挙が行われる予定であり、有権者の関心は、経済、物価、移民、国民保健サービを中心とする公共サービス提供などの問題に集まっていること、また与野党ともに日英関係の重要性は認識しており、野党は、政権復帰を果たす構えであることなどが報告されました。両国において、若者世代の政治への関わりについて問題があり、対応を支援したいとの議論が交わされました。
セッション2: グローバル・セキュリティ:ウクライナ・ロシア
主に中国とグローバルサウス諸国が既存の体制にもたらしている課題および地政学的現状について検討されました。民主主義諸国は、中国とロシアの影響下にある国家に対して安定と繁栄の価値を訴え、慎重な対応を図っていくことが重要であり、日英両国が目下浮上している課題として、1)中国が主張を強めているインド太平洋、2)ロシアの侵略により重大な影響を受けているウクライナおよび近隣諸国、3)イスラエル・ガザ紛争が挙げられました。課題対応をめぐる日英連携の強化が重要であることを再認識し、機密情報共有の枠組みである、「ファイブ・アイズ」への将来的な日本の参加見通しやグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)についても討議されました。
夕食会での議論:「中国」
高原明生、東京大学大学院教授が、中国情勢の進展及び習近平国家主席が直面している課題についてスピーチを行いました。
セッション3:グローバル・セキュリティ:国際安全保障への米国の対応
大統領選挙を控える米国のシナリオについて議論されました。大統領選に先立ってバイデン、トランプ両陣営に働きかけ、孤立主義が有効な選択肢出ないことを具体的に示す必要があり、トランプが勝利し、米国による国際社会へのコミットメントが弱まった場合、日英両国は協力関係を一層強化し、グローバルサウス諸国を中心とする国際パートナーに対して、より包括的なアプローチを図ることで対応していく必要があることが述べられました。また、中国に対して、国内弾圧や好戦的な外交政策に対する懸念は理解できるものの、英国、日本、志を同じくするパートナー諸国は、中国に対して現実的な対応方法を見出し、引き続き法の支配、経済制裁の不使用、人権規範を訴えつつ、必要に応じて、適宜中国に働きかけていくべきという点で意見が一致しました。
セッション4: 気候変動とエネルギー
気候変動とエネルギーについて、またグリーンエネルギー政策への移行におけるファイナンスの見通しに関する討議が行われました。広島アコードにより、再生可能エネルギーの普及拡大、多国間組織、国際金融システムの有効性改善を可能にする際の日英パートナーシップが浮き彫りとなりました。2050年ネットゼロ達成目標への取り組みおいて、気候問題への配慮を企業戦略とし、戦略の柱とすべく取り組みがなされてきました。再生可能エネルギーで必要な材料の生産地が中国を含む一部地域に集中していることもあり、再生可能エネルギーへの移行にはサプライチェーン上の経済安全保障上の問題に影響が及ぶことが予想されます。再生可能エネルギーの資金調達には、政策介入やブレンドファイナンス(官民両セクターのシナジーを最大化するインパクト投資)、ベンチャーキャピタルを活用し、官民の資金を組み合わせていくことが必要であり、民間投資では超えられない障壁を克服することが可能となるとの議論が交わされました。
セッション5: グローバルヘルス「連携によるイノベーションの強化」
日英両国のパンデミックにおける経験について比較がおこなわれ、抗菌薬耐性(AMR)を含むパンデミックの予防、準備、対応、低~中所得国における「顧みられない疾病」対策、気候変動関連の健康安全保障、認知症その他加齢に伴う健康問題などの分野において、日英協力の可能性について討議されました。健康・科学・イノベーションにおいて日英パートナーシップの重要性は、広島アコードでも協調されており、日本では、欧米に比べスタートアップやベンチャーキャピタルによるイノベーションが少なく、日英で官民協力を図り、より大きな医療イノベーションを促進していく余地があるとの議論がされました。また、特別スピーカーとして元共同議長である武見敬三厚生労働大臣より、官民協力を含む「創薬基盤強化プロジェクト」構想について登壇いただきました。
セッション6:AI
日英両国におけるAIの最新動向について検討されました。2023年は、生成AI技術が急速な発展を遂げた一年であり、日本政府は重要領域におけるガイドラインおよび原則を策定すべく、生成AIに関する取り組みを開始しました。米国では、AIの安全性と技術イノベーションに関する大統領令、広島サミットではAIプロセスに関するG7首脳声明も出され、英国主導によるAI安全性サミットも開催されました。EUでは法規制に向け準備が進んでおり、AI政策、法令にどのような要素を組み込むことが可能か、AIのリスクとメリット両方を考慮しつつ議論が行われました。
日英21世紀委員会は、1984年に中曽根康弘首相とマーガレット・サッチャー首相との間で合意され、翌85年に正式に設置された民間レベルの政策対話フォーラムです。年1回の合同会議において両国委員が議論し日英関係のあり方についての提言をまとめ、それぞれの首相に報告しています。(外務省委託事業)
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