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2025年5月15日、参議院議員会館特別会議室において、「インド太平洋地域における普遍的価値の共有を推進する超党派議員連盟」の設立総会が開催されました。本議連は、日本国際交流センター(JCIE)「民主主義の未来」プロジェクトが昨年7月に主催したインドネシア訪問プログラムに参加した超党派の国会議員を中心に設立が呼びかけられたもので、その趣旨に賛同する多くの議員が参加しました(趣旨は後述の中谷元衆議院議員挨拶のとおり)。総会に続いては、同プロジェクト主査でJCIE理事の高須幸雄氏(国連事務総長特別顧問)、および同じく理事のジェラルド・カーティス氏(コロンビア大学名誉教授)による講演が行われました。
本議連の設立は、JCIEが長年にわたり展開してきた「民主主義の未来」プロジェクトの一環として取り組んできた議員間対話の促進や、東南アジア諸国との継続的な協働の積み重ねにご賛同くださる国会議員の皆様のご理解とご支持を得て、一つの形となって結実したものです。こうした積み上げの上に、インド太平洋地域における民主主義の強化に向けた議員間連携の枠組みが設立されたことは、民主主義の後退がますます顕在化する中、日本が主体的に普遍的価値を支持する姿勢を示したという点で、国内外の関係者に希望をもたらす貴重な一歩です。
要旨は以下の通りです。
前半に行われた設立総会では、呼びかけ人代表である中谷元衆議院議員が開会の挨拶を行い、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値の後退が目立つインド太平洋地域において、日本の果たすべき役割はますます大きくなっていると述べました。特に、昨年7月のインドネシア訪問や本年3月のASEAN議員らとの意見交換を通じ、日本に対する地域の期待を実感したことを紹介し、議員としての主体的関与の必要性を訴えました。当日出席した40名を超える超党派国会議員から、本議連の趣旨に対する幅広い支持が示されました。
続いて、呼びかけ人の櫻井周衆議院議員から設立趣意書および規約の説明があり、全会一致で承認されました。また、会長には中谷元衆議院議員、事務局長には櫻井周衆議院議員が承認されました。
後半は、二人のゲストスピーカーによる講演が行われました。高須氏は、世界各国における民主主義の後退傾向について、最新の国際調査データを基に分析を示した上で、民主的制度の支援における市民社会との連携の重要性を強調した。とりわけ、政府を経由しにくい支援が必要な国や地域では、国会議員が民間のチャンネルを後押しする役割を担うべきであると述べました。
カーティス氏は、現在のアメリカ政治の地殻変動に触れながら、「戦後体制の終焉」という視点から日本の戦略的対応を問いました。トランプ前大統領の再登場が象徴するように、アメリカの内向き志向が強まる中、日本は従来のようにアメリカ依存型の外交では立ち行かないと指摘しました。また、国際秩序の不確実性が増す中で、同盟関係において何を共有すべきかという根本的な問いが改めて浮上していることにも言及しました。その上で、「共通の利益」は引き続き日米関係の実務的な土台となり得る一方で、「共通の価値」に対する認識や解釈には国ごとの歴史的・文化的背景に基づく違いがあることにも注意を促し、こうした現実を踏まえたうえで、東南アジア諸国などとの連携強化が求められると述べました。加えて、こうした外交的展開を支えるには、国会議員一人ひとりがイマジネーション、イノベーション、そして勇気をもって行動することの重要性を強調しました。
講演後の意見交換では、参加議員からも積極的な発言が相次ぎました。日本の外交における自立性、今後の民主主義支援の担い手としての在り方、アメリカ依存を脱する中長期戦略の必要性など、多角的な論点が提示されたほか、貧富の格差や市民の不満がポピュリズムや権威主義を助長しているという指摘もなされ、民主主義支援の背景にある国内政治の課題への対応についても問題提起がありました。最後に、本議連の今後の活動について、参加者の意見を踏まえながら随時検討を進めていくことが確認され、総会は終了しました。
冷戦終結により共産主義は自壊し、勝利した自由と民主主義が世界に拡散していくと信じられていました。ベルリンの壁崩壊から30年が経った今、世界各地では権威主義的統治手法が拡大し、先進民主国でさえポピュリズムの台頭でぐらつき始めています。今日の世界において、民主主義は顕著に後退していると言っても過言ではありません。
こうした問題意識を踏まえ、JCIEは、国際秩序と普遍的価値が現在どのような脅威にさらされているのかを理解し、日本としてどのような政策を展開できるのか検討する研究プロジェクト「民主主義の未来 -私たちの役割、日本の役割」を2018年に開始しました。
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