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2023年4月28日、日本国際交流センター(JCIE)が事務局を務める「2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース」(主査:城山英明 東京大学公共政策大学院、大学院法学政治学科研究科、未来ビジョン研究センター 教授)は、来る5月にG7サミット(主要国首脳会議)および関係閣僚会議としてG7財務大臣会合、G7保健大臣会合が開催されるにあたり、将来起こり得る健康危機に効果的に対応する国際的な体制を構築する上で、2023年のG7に求められるアクションをまとめた提言を発表しました。
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のパンデミックが宣言されてから3年以上が経過し、新型コロナの経験を踏まえたパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する国際的な議論が今なお続いています。過去のG7の合意(注1)及びその他の国際的な議論を踏まえ、本タスクフォースは、新型コロナのようなパンデミックを再び起こさないよう、緊張と対立の深まる国際社会にあって国際的な連帯を継続的に後押しするため、2023年のG7に求められるアクションとして以下の3点を提案し、木原誠二内閣官房副長官に手交しました。
提言書の本文はこちらをご覧ください。
また、2024年のG7にPPRの議論が確実に引き継がれるためには、広島G7後のフォローアップが不可欠として、本タスクフォースに国際アドバイザーとして関わった海外の有識者から岸田文雄内閣総理大臣に宛てた手紙(英文オリジナル|和文仮訳)を提出しました。
日本は2013年以来、UHC(注2)を国際保健外交の中心理念として推進してきた。将来の健康危機に備えるためには、各国がUHCという目標の下で、未知なる感染症が起きた時に、医療崩壊を起こさない、かつ感染に対する脆弱性や重症化リスクの高い人々に適切なサービスが提供される、公平で強靭性を備えた保健医療体制を整えることが極めて重要となる。こうした認識に基づき、G7には以下を求める。
パンデミックに効果的に対応する上で、新しい検査、ワクチン、治療といった感染症危機対応医薬品等(medical countermeasures: MCM)を国民に迅速に提供することは国家の責務である。しかしながら、技術・開発力、原材料、資金力が偏在している世界にあって、新型コロナで見られたワクチン格差のような不公平が二度と起こらないようにするためには、国際的な連携と、イノベーションと製造能力の分散化(技術移転、自発的ライセンス合意、等)を含む格差を是正する仕組みが不可欠となる。G7には、UHCへのコミットメントに基づき、健康危機時における革新的技術への公平なアクセスを実現する重要性を再確認し、以下を求める。
世界規模のパンデミックに対応するためには、グローバルな連帯が不可欠ではあるが、ACTアクセラレーターのようなグローバルな仕組みでだけでは、公平なアクセスや地域の事情に合った対応を達成するには不十分である。加えて、イノベーション、説明責任・透明性の担保、格差是正には非政府アクターの参画も必須となる。健康に与える様々な要因、特に、人と動物の健康、環境や生態系の繋がりへの対応も喫緊の課題となっている。以上を踏まえ、G7には以下を求める。
注1) PPRについては、英国が議長国を務めた2021年G7サミットでは、パンデミックが宣言されてから100日以内に診断薬及びワクチンの開発、治療法の確立を目指す「100日ミッション」が打ち出された。ドイツが議長国を務めた昨年のG7サミットでは、新たな感染症例の発生(アウトブレーク)を一早く検知するために必要となるサーベイランスの強化、そして検知及びウイルス解析、臨床試験等を迅速に進めるための多様な専門家の養成と国際連携の強化が「パンデミックへの備えのための合意(Pact for Pandemic Readiness)」として打ち出されている。
注2) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):全ての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる状態
(WHO. 2010. The world health report: health systems financing: the path to universal coverageで定義されたUHCの和訳)
注3) プライマリ・ヘルス・ケア(PHC):健康増進、疾病予防から治療、リハビリテーション、緩和ケアに至る一連の流れの中で、人々のニーズに焦点を当て、できるだけ早期に、人々の日常的な環境に近いところで、可能な限り高いレベルの健康とウェルビーイング(福祉)を公平に保障する、社会全体の健康に対するアプローチ
(WHO and UNICEF. 2018. A vision for primary health care in the 21st century: Towards UHC and the SDGsで定義されたPHCの和訳)
2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース/Hiroshima G7 Global Health Task Force 2022年7月、グローバルヘルス戦略に関する政官民プラットフォームである「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会(委員長:武見敬三 参議院議員、幹事・事務局:(公財)日本国際交流センター)の下に組織された、研究者・実務家を中心としたグループ(主査:城山英明 東京大学公共政策大学院、大学院法学政治学科研究科、未来ビジョン研究センター 教授)。本タスクフォース内には、テーマごとに、1. 強靭・公平・持続可能なUHC、2. 100日ミッション及び製造・供給のあり方(略して「100日ミッション・プラス」)、3. グローバルヘルス・アーキテクチャー構築、の3つの班が設けられた。本タスクフォースは、国際アドバイザーからの意見聴取に加え、The Civil Society 7(C7)関係者を含む国内外の市民社会組織代表、その他のグローバルヘルス関係者と意見交換を行い、2023年のG7で取り上げるべきグローバルヘルスに関わる議題設定に対して学術的な見地からインプットを行い、本提言をまとめた。なお、本タスクフォースには、政府関係者もオブザーバーとして参加し、厚労科研で実施された「2023年G7保健関連会合における我が国の効果的なプレゼンスの確立および喫緊の課題に対応するための国際保健政策への貢献に資する研究」との連携の下、運営された。 |
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