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日本国際交流センター(JCIE)では、パートナー組織である米国法人JCIE/USAとともに、国際交流基金の助成を受けて、高齢社会課題の対話に向けた日米の協力関係を促進する日米健康長寿交流プログラム(US-Japan Exchange Program on Healthy and Resilient Aging)を実施しています。このプログラムの一環として、2025年2月9日から15日にかけて、日本の高齢社会対策に携わる関係団体の代表者が、ワシントンD.C. とオハイオ州コロンバス市(州都)を訪問しました。今回の米国訪問は、2023年の米国オハイオ州コロンバス市(州都)の高齢者支援関係者の東京と神奈川への視察訪問と交流活動に続く、2回目のプログラムとして実施されました。前回の訪日プログラムと同様に、米国連邦政府、ならびに州内の政府機関、大学、自治体、市民団体、非営利団体など、多様なセクターの関係者と意見交換が行われ、特に今回は高齢者にやさしい地域づくりに焦点を当て、今後の対策事業や活動に関して相互に学び合う貴重な機会となりました。こうした交流を通じて、地域や草の根レベルでの健康長寿にかかわる日米の長期的な対話が続くことが期待されます。
プログラムの初日は、米国の首都ワシントンD.C.を訪れ、議会調査局(CRS)の専門家より、日米間の連携や二国間の安全保障上の関係性に加え、メディケア・メディケイド(米国の公的医療保険制度)や社会保障制度など、高齢者向けの社会福祉制度について説明を受けました。その後、ワシントンD.C.の市長局のもとで実際に高齢者向けの社会福祉活動に取り組む2つの団体(Age-Friendly DC、Global Coalition on Aging:GCOA)の関係者と意見交換を行いました。
大雪の予報となった2日目は、アメリカ合衆国住宅都市開発省(HUD)、ならびに高齢者の在宅サービスの提供を支援する各地の地域高齢者支援機関(Area Agencies on Aging: AAA)の調整機関として活動するUSAgingの担当者とオンラインでの会合を行いました。

コロンバスでのプログラムは、オハイオ州立大学社会福祉学部エイジフレンドリーイノベーションセンター(AFIC)のホリー・ダベルコ・ショーニー教授との面会から始まりました。また、コロンバス市議会議員のローデス・バロッソ・デ・パディーヤ氏との意見交換や、中部オハイオ地域高齢者支援機関(COAAA)の代表者より、機関で行われている取り組みについての説明などが行われました。さらに、コロンバス財団のマシュー・マーティン氏より、米国におけるコミュニティ財団が果たす役割の重要性について説明を受けました。
マシュー・マーティン氏との面会に加え、参加者はAARP(全米退職者協会)の方とも面会し、協会が高齢者の声を代弁し、政策提言を行う上で重要な役割を果たしていることに強い関心を寄せました。また、AARPでは「暮らしやすい街づくりプログラム」を通じて、米国内の高齢者にやさしいまちづくりを目指す活動をコーディネートする役割も担っています。米国のこうしたフィランソロピーやアドボカシーのモデルは、日本ではあまり見られない仕組みであり、これらを日本の社会システムに応用できるかについて活発な議論が行われました。
続いて一行は、アッパーアーリントンとワージントンのコミュニティを訪れました。アッパーアーリントンでは、ユケム・アウェカシエン・ジーター市長より温かい歓迎を受け、地域の高齢者のニーズを考慮して建設が進められている新しいコミュニティセンターの建設現場を視察しました。ワージントンでは、オハイオ州高齢者地域支援機関協会代表でもある市議会議員のベス・コバルチック氏と面会し、ワージントン市における、エイジフレンドリーな取り組みや、埼玉県狭山市との姉妹都市プログラムについての紹介がされました。
中央オハイオ交通局(COTA)への訪問では、高齢者や障がいのある人々の交通分野でのニーズや課題とその対応策について説明を受けました。またオハイオ州緊急事態管理局では、自然災害が多い日本でも関心の高い防災や災害対策について、活発な意見交換が行われました。
さらに一行は、在デトロイト日本国総領事館の支援のもと地域の日米コミュニティとセントラルオハイオ日米協会(JASCO)が共催した公開イベントに参加しました。JCIE/USAの50周年記念事業の一環ともなる同イベントで、視察団の笠原航氏と長嶺由衣子氏が、米国ホンダ調査研究所99P Labsのリサーチエンジニア、エリン・クレッパ-氏とともに、高齢化社会とテクノロジーの融合について議論するなど、現地の日米コミュニティの方々との交流の機会ともなりました。



プログラムを終えて、参加者からは以下の感想が寄せられました。
"医療・介護や健康長寿に関わる取り組みの規模や制度は違えど、日米における課題やマインドは大差ないことがわかった。”
”ユニバーサルヘルスカバレッジとは何か。日本の制度の強みや弱みを考えるきっかけを得た。”
”移民の人口比率がまったく異なるため、一見高齢化率は日本よりも低く、高齢社会に向かうスピードは遅く見えるが、各地域の現状や挑戦が共通していることがわかった。”
"不安定な世界情勢のなか、草の根の友好関係の重要性を再認識した。"
後藤 吾郎 鎌倉市議会議員
笠原 航 神奈川県福祉子どもみらい局福祉部高齢福祉課高齢福祉グルーブグループリーダー
長嶺 由衣子 厚生労働省老健局老人保健課課長補佐
大原 一興 横浜国立大学名誉教授
菅原 健介 株式会社ぐるんとびー代表取締役
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