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2025年10月9日、日本国際交流センター(JCIE)民主主義の未来プロジェクトは、ピースウィンズ・アメリカが米日財団の助成を得て取りまとめたレポート「米国の対外援助削減:日米協力に与える影響」(10月10日公開)の紹介を兼ねた意見交換会を協力開催しました。
当日は、執筆者の一人であるピースウィンズ・アメリカのジェイムズ・ギャノンCEOと、助成元である米日財団のジェイコブ・スレシンジャー代表理事が登壇し、超党派の国会議員8名(うち代理2名)やメディア、NGOの参加者らと意見交換を行いました。
意見交換では、米国政権による対外援助の縮小が国際社会、特にインド太平洋地域の民主的ガバナンスにリスクを及ぼしている現状を踏まえ、日本の国益や日米の開発協力への影響について議論が行われました。あわせて、こうした環境変化の中で生じる実務上のギャップを補うためのプロジェクト戦略についても言及され、日本が果たすべきリーダーシップの方向性について意見が交わされました。主な論点は以下のとおりです。
米国の対外援助縮小の影響:米国は長年、世界の開発課題における最も著名なリーダーであり、特に保健、食料、人道支援、ガバナンス、市民社会支援など幅広い分野で国際援助を主導してきました。一方、日本は要請主義に基づく政府間支援を軸に、インフラ、人材育成、経済開発等で強みを発揮してきた背景が共有されました。しかし、米新政権下でUSAIDを含む対外援助が急減した結果、アジア地域をはじめ米国の支援に依存してきた各国では、支援活動の人員・機能が大幅に失われる事態に直面していると指摘されました。日本が制度上対応しにくい分野を中心に支援の空白が生まれているとの懸念が示されるとともに、米国の支援の後退により、日米が共有してきた共通課題が失われかねないとの問題提起もなされました。
日本が取り得る戦略的アプローチ:日本は援助の在り方を見直すべきだという指摘もありました。近年の円安により、日本のODAは名目額が維持されていても国際的な購買力が低下し、実質的価値が目減りしているとの問題意識が共有され、こうした制約を踏まえると、資源を多方面に分散させず、特定分野へ集中させる戦略的再配分が提案され、小規模でも高いインパクトを生む取り組みが望ましいとされました。また、日本の市民社会支援(草の根無償、NGO連携支援、ジャパン・プラットフォーム等)の規模を増加させる意見も出されました。さらに、米国が後退する中、日本はODAを通じてアジアでの存在感とリーダーシップを確保する好機であり、日米協力の視点からも政治家による働きかけの重要性が強調されました。
対外援助への理解を広げるコミュニケーション:先進国では自国防衛が優先されがちな一方、国内格差の広がりにより対外援助への批判が強まる可能性も指摘されています。このため、政府内でも世論に対して、なぜ国際社会との関与が自国の利益につながるのか、説得力をもって示していくことが求められています。対外援助には国民の安全保障に資する側面があることを丁寧に説明するとともに、日本政府の予算に占める援助の割合がごくわずかであることへの理解を促進する教育や広報の重要性が強調されました。
冷戦終結により共産主義は自壊し、勝利した自由と民主主義が世界に拡散していくと信じられていました。ベルリンの壁崩壊から30年が経った今、世界各地では権威主義的統治手法が拡大し、先進民主国でさえポピュリズムの台頭でぐらつき始めています。今日の世界において、民主主義は顕著に後退していると言っても過言ではありません。
こうした問題意識を踏まえ、JCIEは、国際秩序と普遍的価値が現在どのような脅威にさらされているのかを理解し、日本としてどのような政策を展開できるのか検討する研究プロジェクト「民主主義の未来 -私たちの役割、日本の役割」を2018年に開始しました。
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