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民主主義の未来:第1回「民主的ガバナンス・普遍的価値観の推進に向けた政策対話」シリーズ

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日本国際交流センター(JCIE)民主主義の未来プロジェクトは、2023年3月29日(水)に、「民主的ガバナンス・普遍的価値観の推進に向けた政策対話」シリーズの第1回として、「人権と民主主義」をテーマに超党派の国会議員9名とゲストスピーカー3名による懇談会を開催しました。

本懇談会では、世界の人権侵害状況の急速な悪化に伴い、国際社会はどのような姿勢で何に留意しながら対応を進めるべきか、また、人権という価値の普遍性を共有するG7諸国への期待や日本の外交的役割について対話と意見交換がなされました。現職以前には自身も市民活動家あるいは支援者としての経験を持つスピーカーらからは、当事者としての経験を基に、活動家支援や民主主義擁護を推進する現在の各々の立場からの冒頭発言がありました。それを受けて、参加国会議員からは、個々が取り組んでいる政策やその進め方についての意見や展望を求めるコメントや、日常の活動の課題の共有がなされるなど、幅広く活発な対話となりました。

本政策対話シリーズは、日本の外交政策や開発援助政策に、民主的ガバナンス―すなわち自由、説明責任、法の支配、個人の尊厳とエンパワメント等の価値に基づくガバナンス―をいかに組み込むかについて、喫緊の課題をテーマに日本の国会議員と海外の政策立案者、実務家、CSOリーダーの間での積極的かつ具体的な議論を促すことを目的に実施するものです。

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意見交換要旨

懇談会の中で繰り返し触れられた要点を事務局がまとめたもので、参加者の総意として掲載するものではありません。

  • 世界的な民主主義の退潮に対する危機感: 近年の非自由主義的な勢力の台頭と、そのことがもたらす民主的プロセスや規範、普遍的価値に対する脅威について強く警鐘が鳴らされました。また、こうした傾向が、いわゆる新興国に限らず、日本やアメリカのように民主主義が成熟しているとされる国々の中にも、ポピュリズム、ナショナリズム、人種差別主義、外国人排斥主義のような形で根を下ろしている憂慮すべき状況が度々言及されました。
  • 日本の主導的な役割に対する期待: 日本が、インド太平洋地域において民主主義と人権を促進し、擁護するための努力を拡大していることが注目され、日本の「自由で開かれたインド太平洋構想」の中で、民主主義の普遍的価値である、法の支配、グッドガバナンス、人権、地域の平和と安定などが重視されていることが、インド太平洋地域の他の国々にとっていかに重要な意味合いを持つか、そして、G7議長国として、日本が何を考えどのように行動するか、国際社会から高い期待が寄せられていることにも触れられました。また、経済発展、安全保障、民主主義は相互に補強し合うということを忘れてはならず、民主的でレジリエントなインド太平洋地域を実現するために主導的な役割を果たすことは、日本自身の平和と繁栄、そして日本人の未来にも資することが強調されました。
  • 民主主義の不完全性と強み・可能性: 民主主義そのものの強みとして、不完全性を認識しながらも、異なる立場の人々が互いから学び合い、共に課題を解決してゆくことができる点が改めて指摘されました。そうした利点にもかかわらず、近年は国連も人権や民主主義の側面では批判を受ける中、EUやASEAN、インド太平洋地域内のいくつかの枠組みのように、小規模で地域性のある多国間枠組みが人権と民主主義を擁護し推進してゆくことで、新たな規範が形成されることへの期待感も共有されました。また、民主主義の強さの尺度となるのは、最も弱い立場にある国民をどう扱うかであり、あらゆる立場からの対話を通じて、社会で最も弱い立場にある人々に力を与える方法を見つけることが極めて重要で、独立したシビルソサエティを支援する新しい方法や新しいイニシアチブを望む発言が、全てのゲストスピーカーからなされました。
  • 強固なシビルソサエティの死活的な重要性: 「自由で開かれたインド太平洋」にふれて、防衛や経済、海上領域の利害などが「自由で開かれ」ていても、他方で表現の自由やシビルソサエティ活動、メディアの自由と独立が奪われていたとしたら、真に「自由で開かれた」地域とは言えないとの観点から、民主主義と人権を擁護していくための具体的な「ツール」が必要であるとの提起もなされました。そのためにも、その「ツール」たり得るのは、自由と独立が保証された強固なシビルソサエティが権力を適切に監視するシステムであることも強調され、市民活動家らに自由と独立性を担保しない限り、社会課題の解決は成し得ないとの認識が共有されました。

ゲストスピーカー(プロフィールはこちら)
フランシスコ・ベンコスメ、米国務省東アジア・太平洋局次官補上級アドバイザー
ジューン・リン、全米民主国際研究所(NDI) シニア・プログラム・マネジャー
リン・リー 、 全米民主主義基金(NED)アソシエート・ディレクター アジア担当

モデレーター
高須幸雄、JCIE民主主義の未来プロジェクト主査;国連事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)

関連情報

当プロジェクトは、今回の懇談会の前日3月28日に、公開シンポジウム「インド太平洋の普遍的価値の養護ーG7・日本の役割」を開催し、その議論を受けた提言書が4月3日に岸田総理大臣に提出されました。詳細はこちら

民主主義の未来プロジェクトの概要

冷戦終結により共産主義は自壊し、勝利した自由と民主主義が世界に拡散していくと信じられていました。ベルリンの壁崩壊から30年が経った今、世界各地では権威主義的統治手法が拡大し、先進民主国でさえポピュリズムの台頭でぐらつき始めています。今日の世界において、民主主義は顕著に後退していると言っても過言ではありません。
こうした問題意識を踏まえ、JCIEは、国際秩序と普遍的価値が現在どのような脅威にさらされているのかを理解し、日本としてどのような政策を展開できるのか検討する研究プロジェクト「民主主義の未来 -私たちの役割、日本の役割」を2018年に開始しました。
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