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日本国際交流センター(JCIE)の「民主主義の未来プロジェクト」は、2024年6月10日から12日にかけて東京ユース・デモクラシー・フォーラム2024を開催しました。このフォーラムは、テーマ「アジアの若者が健康な社会を実現するための役割:民主主義とデジタルの最前線」("The Role of Asian Youth in Achieving a Healthy Society: Democracy and the Digital Frontier")の下、インド太平洋地域および日本において民主主義擁護に尽力する若いリーダーや活動家同士が一堂に会し、若者がどのようにして民主主義的な関与とデジタルツールの革新的な活用を通じて健全で健康な社会を築くことができるかを探求することを目的に実施しました。4日間にわたる集中討議と実践的なセッションを通じて、参加者は具体的なアクションプランを策定し、帰国後も継続して取り組むべき課題に対する解決策を共有しました。
議論の要旨は以下の通りです。
午前中には、以下のトピックについて全体会議を行いました。
若者にとっての健全な社会(Healthy Society)とは何か
参加者は「健全な社会とは何か」というテーマで各国の視点を共有するため、一人ずつ発表を行いました。これらのプレゼンテーションにより、教育の強化、政治参加の促進、情報アクセスの改善が共通のテーマとして浮かび上がりました。
アジアの若者の政治意識と行動
続いて、2023年にJCIEの民主主義の未来プロジェクトが実施した「アジア10カ国の若者の政治的関心と態度に関する調査」(PPT 日本語 ・ 英語)の結果が発表され、地域ごとの若者の政治参加の現状と課題が明らかになりました。一部の国では若者の政治的関心と活動が高い一方で、他の国では政治的無関心、情報アクセスの欠如、政治的環境の制約といった障壁が存在することが示されました。
午後、参加者は特定の課題についてさらに深く掘り下げるために、3つのテーマ別ワーキンググループに分かれ議論を行いました。
WG1: デジタル時代のシビックエジュケーション
このグループは、シビックエジュケーションを「正確な情報を持ち、積極的に参加する市民を育成する役割を果たすもの」と定義付け、デジタルリテラシーを含むシビックエジュケーションの拡大を議論し、デジタルスペースの責任ある使用とデジタル権利の重要性を強調しました。
WG2: 若者の声と政治的対応
若者の声の増幅とそれらへの政府のレスポンスに焦点を当てたグループは、デジタルツールが若者の声を増幅し、政治的対応を促進する方法を探求しました。議論では、デジタルエンゲージメントの利点と課題が取り上げられ、デジタルプラットフォームが政治参加をよりアクセスしやすく包摂的にする方法について議論されました。参加者はまた、デジタル監視、誤情報、既存の偏見を強化するエコーチェンバーのリスクにも言及し、これらのリスクを軽減しながらデジタルツールの可能性を最大限に引き出すための戦略の必要性を提示しました。
WG3: デジタル時代における情報過多への対処方法
このグループは、情報過多の現象とそれが若者のエンゲージメントに及ぼす影響を検討しました。政府機関、個人、民間セクター、伝統的メディア、NGOを含む主要なアクターを特定し、情報過多の管理におけるそれぞれの役割について議論しました。参加者は、デジタルリテラシーの促進、批判的思考の奨励、オンラインで利用可能な膨大な情報をナビゲートするためのツールや政策の実現の重要性を示しました。
フォーラム3日目の午前中には若者同士の連帯を強化するためにフォーラムの拡大会合の一環としてMilk Tea Alliance Japanとの対話を実施しました。午後には、前日のワーキンググループの議論をまとめたアクションプランの策定を行いました。
Milk Tea Alliance Japanとの対話
一橋大学グローバル・ガバナンス研究センターで実施されているMilk Tea Alliance Japan (MTA Japan) プロジェクトのメンバーと会合を持ちました。このMTAプロジェクトは、ミャンマー、タイ、香港などの国の抑圧的な政府に対抗している民主主義・人権活動家(在日)が参加しています。MTA Japanの参加者からインド太平洋地域における人権侵害、課題、目標について共有された後、フォーラムの参加者との議論では、人権侵害が国際的な脅威であることが強調され、特に若者が民主主義と人権の向上に向けて連携する重要性について共通認識を強くしました。
午後には、ワークショップの討論リーダーがこれまでの発見をまとめ、フォーラム参加者のための具体的なアクションプランを策定しました。
フォーラムの最終日である6月12日、国際シンポジウムを衆議院第一議員会館の国際会議室で開催し、ワークショップでの成果と若者のアクションプランを発表しました。
開会挨拶
シンポジウムは、民主主義の未来プロジェクト主査 高須幸雄氏の開会の挨拶から始まりました。高須氏は、民主的なプロセスにおける若者の参加の重要性を述べ、民主主義の未来が若者の積極的な参加にかかっているとし、新しい視点と革新的なアイデアが現代の課題に対処するために必要であることを述べました。また、デジタルツールが市民参加を促進し、情報へのアクセスを民主化する可能性についても言及しました。
高須氏の開会の挨拶に続いて、衆議院議員で自民党青年局長の鈴木貴子氏と、インドネシアの民主党の活動家であるゲミンタン・ケジョラ・マラランゲン氏によるオープニングリマークスが行われました。
鈴木氏は、若者が政治と政策決定に積極的に関与する必要性について語り、若者が持つエネルギーと創造力が進歩的な改革を推進し、社会問題に対処するために不可欠であると主張しました。また、自身の政治的経験から得た洞察も共有し、参加者にリーダーシップの役割を追求し、自分たちが望む変化を主張することを奨励しました。
続いて、インドネシアの民主党の活動家であるゲミンタン・ケジョラ・マラランゲン氏が講演し、若者の民主主義への関与の変革的な可能性について述べました。同国のみならずインド太平洋地域において、若者活動家が直面する政治的な制約や政策決定の場へのアクセスの限界について触れながらも、若者の声を政治的対話に取り入れることの重要性を再確認しました。さらに、決意と組織力を持った若者がコミュニティや国に与えた影響の力強い例証として、インドネシアにおいて若者主導の運動が社会的および政治的に大きな変化をもたらした成功例も共有しました。
アジア10カ国の若者の政治的関心と態度に関する調査結果発表
次に、JCIEプログラム・オフィサー 田井中亮より、2023年の「アジア10カ国の若者の政治的関心と態度に関する調査」(PPT 日本語 ・ 英語)の結果を概説しました。主なポイントは以下の通り。
・学校での市民教育の重要性
・若者の声を増幅するためのデジタルプラットフォームの活用
・情報へのアクセスと透明性の必要性
ワークショップ成果発表
シンポジウム後半は、10日のワークショップでの討論とコメントが発表されました。
WG1「デジタル時代のシビックエジュケーション」のインドネシア国立研究革新庁(BRIN)の政治研究チームリーダーであるムリザ・クリストファー・ドナ・スウェインスタニ氏が代表してグループの発見について報告し、デジタルリテラシーを含む包括的な教育プログラムの必要性を強調しました。続いて、WG2のミグランテ・インターナショナル台湾支部のジュリア・マリアノ氏が、「若者の声と政治的対応」グループの議論を要約し、デジタルツールが政治的関与を促進する可能性と、誤情報や監視のリスクについて言及しました。最後に、WG3のアクバヤン・ユースのジャスティン・バレーン氏が、「情報過多に対処する方法」グループの結論を発表し、デジタルリテラシーの促進と情報過多の管理戦略の重要性を強調しました。
アクションプラン発表
韓国からの参加者、ソヒ・ヤン(VALID創設者、Community of Democraciesのユースリード)と、日本からの参加者、川和ニコラ(Japan Youth Platform for Sustainability(JYPS)の政策提言部門メンバー、東北大学法学部学生)がフォーラムの成果として、以下のアクションプランを発表しました。
(以下は事務局による和訳。英語原文は下部の参考資料からダウンロードできます)
越境する若者の民主主義ネットワークの構築
参加者は、以下の方法でステークホルダーを越境してつなぐネットワークの正式化を提案しました:
地域全体でのシビックエジュケーションの強化
具体的な最初のステップとして、地域全体でのシビックエジュケーションの発展に関する教訓を共有するためのタスクフォースの創設を提案しました:
閉会挨拶
高須氏は継続的な協力とアクションプランの実行の重要性を再度強調しました。参加者全員に対してコミュニティでの積極的な活動を続け、民主的な価値を擁護することを奨励しました。また、政府、教育機関、市民社会組織、民間セクターなど、すべての関係者からの継続的な支援と関与の必要性も訴え、シンポジウムを締めくくりました。
冷戦終結により共産主義は自壊し、勝利した自由と民主主義が世界に拡散していくと信じられていました。ベルリンの壁崩壊から30年が経った今、世界各地では権威主義的統治手法が拡大し、先進民主国でさえポピュリズムの台頭でぐらつき始めています。今日の世界において、民主主義は顕著に後退していると言っても過言ではありません。
こうした問題意識を踏まえ、JCIEは、国際秩序と普遍的価値が現在どのような脅威にさらされているのかを理解し、日本としてどのような政策を展開できるのか検討する研究プロジェクト「民主主義の未来 -私たちの役割、日本の役割」を2018年に開始しました。
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