ページを探す

ページを探す

JCIEとは

事業内容

お知らせ

会員・寄付

TICAD9 テーマ別イベント「保健医療におけるアフリカ・日本 コモン・ビジョン」の開催

パネルディスカッションの様子

2025年821日、日本国際交流センター (JCIE)は、アフリカ連合開発庁 (AUDA-NEPAD)との共催で、第9回アフリカ開発会議 (TICAD 9)のテーマ別イベント「保健医療におけるアフリカ・日本 コモン・ビジョン:健康安全保障と持続可能な成長を共創する」を実施し、「保健医療におけるアフリカ・日本 コモン・ビジョン」を発表しました。本イベントでは、同ビジョンを取りまとめたワーキンググループの座長である國井修 GHIT Fund CEO兼専務理事をモデレーターに迎え、同グループのアドバイザーやパートナーを務めた多様な専門性を有するアフリカ及び日本の識者の参加を得て、同ビジョンに基づき、TICAD9のテーマである「革新的な解決策の共創」を保健医療分野でどのように実現できるか議論しました(本イベントは、TICAD9に向けた「保健医療におけるアフリカ・日本 コモン・ビジョン」の策定事業の活動の一環として行われたものです)。

プログラムブック (PDFファイル) アジェンダと登壇者の略歴はこちらをご覧ください。

討議の概要

開会挨拶とプレゼンテーション

伊藤聡子JCIE執行理事
パトリック・アモス医務技監
阿部俊子衆議院議員
オルクンミ・バログン聖路加国際大学大学院 公衆衛生研究科講師

共催機関を代表して開会の辞を述べた伊藤聡子JCIE執行理事は、このビジョンは、5か月間にわたりアフリカと日本の専門家が議論を重ねて策定したものであり、健康を両地域の繁栄と安全保障の基盤と位置づけ、協力の優先分野を明確にしたものであると紹介しました。そのうえで、今日のイベントは始まりに過ぎず、実行に移していくことが重要だと期待を述べました。

特別挨拶では、ケニアのアデン・バーレ・ドゥアレ保健大臣の挨拶を代読したパトリック・アモス医務技監が、同ビジョンを長期的なレジリエンスと包摂的成長の戦略基盤として支持すると表明しました。ケニアは、デジタルヘルスの推進、規制体制の強化や民間企業との連携を通じたワクチンの臨床試験能力強化などにも注力しており、日本との共同研究や製薬・医療機器分野での連携を呼びかけました。また、アフリカと日本の間で戦略的ヘルスイノベーションを議論する対話を立ち上げることを提案し、国境を超える気候変動やパンデミックの脅威に対して、連帯と共創による持続可能な保健システム構築を訴えました。続き登壇した阿部俊子衆議院議員(文部科学大臣)からも、こうしたアフリカと日本の共創を推進する取り組みへの支持が表明されました。

続いて、ワーキンググループの共同筆頭執筆者であるオルクンミ・バログン聖路加国際大学大学院 公衆衛生研究科講師が、同ビジョンの主要メッセージとして、5つの基本原則、そして、その達成のための5つの優先領域について、アフリカと日本双方にとってのベネフィットを示しつつ説明しました。

パネルディスカッション

國井修 GHIT Fund CEO兼専務理事
マグダ・ロバロ UHC2030運営委員会共同議長
サリム・アブドゥル・カリムCAPRISA所長
澤田拓子 塩野義製薬株式会社副会長
パネルディスカッションの様子
アミット・タッカー アフリカ・ヘルス・ビジネス執行役会長
ウィリアム・アンポフォ アフリカ・ワクチン製造イニシアティブ事務局長
フィツム・アラマイユ WACI Healthアフリカ連合リエゾン・オフィス所長

パネルディスカッションでは、國井座長の呼びかけに応じて、議論は「持続可能な保健財政」「公平なパートナーシップ」「人材育成と共創」の三つの柱を中心に展開されました。

まず、持続可能な保健財政については、多くのパネリストが最優先課題であると位置づけました。マグダ・ロバロ UHC2030運営委員会共同議長は、保健財政は「アクラ・イニシアティブ」をはじめとする様々な政策枠組みの基盤であると強調し、税制度の改革や資源の効率的な活用の必要性を指摘しました。アミット・タッカー アフリカ・ヘルス・ビジネス執行役会長は、短期的な政治的思惑による不適切な税収の使い方や保健医療の政治的優先順位が低いゆえに起こる資源配分の歪みを正し、より良い保健アウトカムが達成できるような資金の使い方をすべきだと強調しました。さらにフィツム・アラマイユ WACI Healthアフリカ連合リエゾン・オフィス所長は、進捗状況の定期的なレビューや必要に応じた軌道修正の重要性に触れるとともに、アフリカに根ざした市民社会が自律的にアドボカシーを行うことで、政府、国際機関、そして民間セクターを巻き込む橋渡し役となり得ると訴えました。ワクチン製造の観点からウィリアム・アンポフォ アフリカ・ワクチン製造イニシアティブ事務局長も、持続可能な市場形成には税制度や政策環境の整備、そして研究開発パートナーシップへの長期的投資が不可欠だと指摘しました。

次に、公平なパートナーシップのあり方については、アフリカと日本を含む他地域との連携が、相互尊重を基盤としたものでなければならないという点で意見が一致しました。さらにロバロ氏は、南南協力に加え、グローバル・ノースとグローバル・サウスが対等に尊重しあう共創体制の構築が必要だと述べました。

最後に、人材育成と共創の重要性について議論を深めました。サリム・アブドゥル・カリムCAPRISA所長は、特にデジタルヘルス分野での共創に大きな可能性があるとしながらも、導入コストや通信インフラの制約が課題となっている現状を指摘し、日本の協力の意義を強調しました。澤田拓子 塩野義製薬株式会社副会長は、感染症領域での経験を踏まえ、診断ガイドラインの不足や医療従事者の教育不足が薬剤耐性(AMR)のリスクを高めていると指摘しました。そのうえで、日本との協力による診断能力の強化や、各大学・研究機関での取り組みを可視化し共有する「研究マッピング」の必要性を提案しました。アンポフォ氏も同様に、人材開発をアフリカの製造基盤強化の中核に据えるべきだとし、日本との協力を通じた人的資源育成の推進を呼びかけました。

以上のように議論は、持続可能な保健財政を土台に、公平なパートナーシップを基盤とし、人材育成と共創を推進するという三本柱に集約されました。パネリストたちは、日本とアフリカの協力がこれらの課題解決に大きく寄与する可能性を確認し、具体的な道筋について多角的に提案を行いました。

閉会挨拶

武見敬三JCIEシニアフェロー
チムウェムウェ・チャムディンバ アフリカ医薬品規制調和イニシアティブ・ヘッド

閉会挨拶では、武見敬三JCIEシニアフェロー(前厚生労働大臣)が、アフリカと日本がそれぞれの強みを活かし、共創的な関係を築く重要性について改めて確認しました。特にデジタル技術や人材育成、民間セクターの参画、保健財政改革が、今後の協力体制で重要な分野になると述べました。さらに、アジアで進む規制調和や臨床試験ネットワークの経験をアフリカでも展開できると述べ、教育・人材交流の拡充を含む長期的な協力を呼びかけました。

続き登壇した、AUDA-NEPADチムウェムウェ・チャムディンバ アフリカ医薬品規制調和イニシアティブ・ヘッドも、この「保健医療におけるアフリカ・日本 コモン・ビジョン」を単なる文書に終わらせず、既存の基盤を活かしつつも、革新的なアプローチによって実行と成果につなげる必要性を強調しました。進捗を可視化する「スコアカード」の導入が提案されたことを受け、次に集まる際には、もう一度ビジョンや課題について話し合うのではなく、その間に達成した進捗や、もたらしたインパクトについて話し合う場にすべきだ、と訴えて会合を締めくくりました。

ワーキンググループのメンバーと共に

録画

議論の詳細な内容など、イベント当日の様子は以下の動画(英語)をご覧ください(YouTubeの動画ページにチャプターがあります)。

  • グローバル課題
  • グローバルヘルス
  • グローバル課題
  • 外交・安全保障
  • グローバルヘルスと人間の安全保障プログラム
  • グローバルヘルスに関する多様なステークホルダーとの対話
  • アフリカ
  • 対話・セミナー
  

グローバルヘルス政策に関する多様なステークホルダーとの対話に関する活動報告

活動報告の一覧を見る

グローバル課題に関する活動報告

国交正常化60周年、新たな協力の方向性を提言:日韓フォーラム

国交正常化60周年、新たな協力の方向性を提言:日韓フォーラム

日英21世紀委員会 第41回合同会議

日英21世紀委員会 第41回合同会議

将来の日独関係を担う若手社会人育成への投資を求める:日独フォーラム

将来の日独関係を担う若手社会人育成への投資を求める:日独フォ...

普遍的価値、アジア視点の再定義を 国会議員とアジア・リベラル民主評議会が意見交換

普遍的価値、アジア視点の再定義を 国会議員とアジア・リベラル...

外国人住民との地域共生—名古屋での連携会議とフィールドワーク

外国人住民との地域共生—名古屋での連携会議とフィールドワーク

「外国ルーツ青少年のキャリア支援でのインパクト創出」全体会議とフィールドワーク

「外国ルーツ青少年のキャリア支援でのインパクト創出」全体会議...

米国次世代政治リーダーが来日:東京都と山口県で交流

米国次世代政治リーダーが来日:東京都と山口県で交流

日米青年政治指導者交流プログラム 第30回日本代表団訪米プログラム

日米青年政治指導者交流プログラム 第30回日本代表団訪米プロ...

日米青年政治指導者交流プログラム :50周年記念米国代表団訪日プログラム

日米青年政治指導者交流プログラム :50周年記念米国代表団訪...

関連する活動報告はありません。

Support Us

支援する

民間の立場から
世界の平和と安定を目指す
活動に参加しませんか

  • 法人会員になる

    民間企業‧団体の皆様からのご支援をお願いしております。法人会員になると、国際的なネットワーク拡大の機会を得られます。

  • 個人会員になる

  • 1回のみの寄付

Copyright © Japan Center for International Exchange (JCIE)